京都大学の松浦健二教授らの日米共同研究グループは、日本のオオハリアリが米国に侵入して食性を変化させ、他のアリを追いやって分布を拡大していることを、日米両国での野外調査と放射性炭素分析により明らかにした。グループには他に、岡山大学、琉球大学、ノースカロライナ州立大学、テキサスA&M大学が参加。
人間の活動により、多くの生物が本来の生息場所ではない場所に持ち込まれ、在来の生物に悪影響を及ぼす。この外来種問題は種の絶滅の要因の一つとされる。
日本のオオハリアリはシロアリの捕食者で、頻繁にシロアリの営巣木に同居し、その毒針でシロアリをハンティングしながら生活する。このオオハリアリが米国に侵入し、その分布を拡大している。
今回の研究では、まず、原産地の日本(岡山県)と侵入地の米国(ノースカロライナ州)で朽ち木に営巣するシロアリとアリの採集調査を行い、オオハリアリの米国への侵入が在来種に与える影響を調査。また、安定同位体分析と放射性炭素分析により、オオハリアリの原産地と侵入地での食性を調べた。
その結果、オオハリアリはシロアリ以外に植食性昆虫や節足動物なども幅広く利用するように食性を変化させていたことが判明。食性幅の拡大により、在来アリより有利に資源を使用したことで、在来種の種数が減少していた。これらの結果は、外来種の生体が原産地と侵入地で変化することにより、原産地の状況からは予測できない大きなインパクトを侵入地の生態系に与え得ることを示している。
今回の研究は「生物は侵入先で変化する」という事実を明確に示した。今後、あらゆる生物の輸出入や外来種問題を考える上で重要な知見を与えるものと期待される。