国立成育医療研究センター、東京農業大学、弘前大学大学院の研究グループは、腸管の免疫機能を有する高機能化した「ミニ腸」の開発に世界で初めて成功した。小児難治性腸疾患の病態解明や創薬研究への応用が検討されるという。

 口からつながる消化管は、外来物とふれあう最も重要な体内臓器であり、体内の免疫系の細胞のうち約70%が腸管に存在する。自然免疫細胞であるマクロファージは、さまざまなウイルスや細菌感染症に対する生体防御に重要な役割を持つが、慢性炎症や自己免疫疾患などの病気にも深く関わっている。最近、ヒトの腸管モデルとして試験管中で幹細胞から作るミニチュアの臓器で3次元化組織(オルガノイド)の研究が世界中で活発に行われている。しかし、自然免疫応答までも観察できるオルガノイドモデルは未だ報告がなかった。

 「ミニ腸」は国立成育医療研究センターが2017年に開発したもので、ヒトiPS細胞由来の、吸収・分泌、蠕動様運動などのヒト腸管の機能を有する機能的な立体腸管。研究グループは今回、ミニ腸を作製する同一のiPS細胞から単球(白血球の一種)を作製し、ミニ腸内へ移植した後マクロファージへ分化させ、ミニ腸内に生着させた。このミニ腸内の組織マクロファージは、様々なサイトカインなどの生理活性物質を分泌し、大腸菌を貪食する機能性も有していることを示した。

 今回の成果は、試験管内でヒト腸管の自然免疫応答も解析できる高機能化したミニ腸の創生により、生体内における腸管免疫応答や炎症性疾患などの病態を再現できる革新的なバイオモデルで、創薬研究開発にも活用が期待されるとしている。

論文情報:【Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology】Development of human gut organoids with resident tissue macrophages as a model of intestinal immune responses(PDF)

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