京都大学、横浜市立大学、エコチル調査神奈川ユニットセンターの研究チームは、子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)のデータから、妊婦の血中重金属濃度と生まれた子どもの「川崎病」発症との関連について解析した。その結果、両者の間に関連性を認めなかったことを報告した。
川崎病とは、主に5歳以下の小児に発症する全身の血管炎で、眼充血・口唇発赤・全身の発疹などの症状を特徴とする。年間有病率(10万人あたり)は、日本が最多で330.2人(2015年)、台湾で69.0人(2006年)などである。発症原因は明らかとなっていないが、症状が水銀中毒と類似する点や、魚を食文化に取り入れており血中重金属濃度が高いアジア人かつ海沿いの地域に発症者が多い点などから、血中重金属と川崎病との関連性が指摘されてきた。
そこで本研究チームは、2010年度から全国で約10万組の親子を対象に行われている大規模出生コホート調査「エコチル調査」のデータを用いて、妊婦の血中重金属濃度と生まれた子どもの川崎病発症との関連についてロジスティック回帰分析で検証した。
その結果、5種類の重金属(水銀・カドミウム・鉛・マンガン・セレン)を対象とした妊婦の血中重金属濃度と、生まれた子どもの1歳・2歳・3歳の各時点の川崎病発症リスクとの間に、いずれも関連性を認めなかった。
この結果により、川崎病の発症原因に関する研究の進展が期待される。今回の調査では、妊婦の血中重金属濃度に着目して子どもの川崎病発症を検証しており、子ども自身の血中重金属濃度は検証していないことから、子ども自身の測定値を用いた今後の研究も期待されるとしている。