自治医科大学の菊池次郎准教授、古川雄祐教授らは血液がんの一種である多発性骨髄腫の細胞が、遺伝子に変異を起こすことなくが抗がん剤に対抗しているメカニズムを発見しました。さらに、耐性獲得を妨害する薬剤を発見することにも成功しました。現状では治療が困難で予後が非常に悪いこの病気の根治につながる結果として期待されています。

多発性骨髄腫は骨髄中の免疫に関係する細胞が腫瘍化した病気です。10万人当たり3人から4人が発症し、50歳以上の中高齢者に多くみられます。現在の治療法で症状緩和や進行を遅らせることはできますが、根本的な治療方法は確立されていません。主に抗がん剤による治療が行われますが次第に耐性を獲得していくため、そのメカニズムを解明し新治療法につなげることが求められています。

 菊池准教授らは腫瘍細胞が抗がん剤耐性を獲得する様子を人工的に再現する培養システムを考案しました。これを用いて遺伝子の変異を伴わず、発現を制御することで抗がん剤への耐性を獲得する様子を観察・解析しました。その結果、ある酵素の活性が抑えられていることを突き止めました。さらに、この酵素の活性の阻害を防ぐ薬剤がないかを調べることで、マウスにおいて病気の治療効果を示す薬を発見することに成功しました。

 こうして多発性骨髄腫が抗がん剤に対する耐性を獲得するメカニズムを解明するとともに、治療効果が認められる薬剤を発見することもできました。今後はこの薬剤を用いた治療方法の確立に向けて臨床研究へと進めていくとしています。この新薬と抗がん剤を併用することで、多発性骨髄腫は治療が可能な病気になるかもしれません。

出典:【自治医科大学】多発性骨髄腫の抗がん剤耐性に関する新たなメカニズムの発見

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