東京理科大学、東京大学、東京工芸大学の研究グループは、人体通信システムの信号伝達を簡易な等価回路モデルを用い、送受信機器の各種パラメータに対する伝送利得(距離と電波強度の関係)の変化が説明できることを実証した。
近年普及しているウェアラブル機器に使われるWi-FiやBluetoothなどの無線技術はセキュリティが脆弱だ。また、電磁波を吸収する人体が無線通信に障害になる。一方、人体そのものを電磁波の通路として活用する人体通信は、低消費電力でセキュリティの堅牢な高信頼性通信が可能だ。それは、距離により急減衰する「近接場電界」を信号伝送に使うため周辺に電磁界が漏洩しにくく、信号伝送路が人体周辺だけなので他からの電磁干渉が小さく雑音が少ないことによる。
研究では、送信機から人体を経由し受信機へ至る信号伝送の等価回路モデル(ある特性に関し単純化した回路モデル)を構築して特性分析を実施。今回、手首にウェアラブル機器を装着したユーザが駅の改札機などの大型設置機器にタッチして人体通信することを想定。信号電極とグラウンド電極の二つが人体に接した送信機(ウェアラブル機器)と、信号電極のみが人体に接した受信機(設置型機器)を用いた実験を行った。
その結果、送信機の二つの電極が離れるにつれ、等価回路モデル内の出力インピーダンス(電流の流れにくさ)が大きくなり、また、受信機のグラウンド(接地)が大きくなると、グラウンドと人体の容量結合(電気容量のある2回路の結合)が大きくなると判明した。
今回の研究成果により、低消費電力で秘匿性に優れた人体通信技術の開発が効率化され、認証情報や医療ヘルスケア分野などへの応用が期待される。