第62次南極地域観測隊は、2020年11月20日、昭和基地に向け出発した。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、南極観測船の他国への寄港が困難となったため、日本の南極地域観測事業において20年(42次隊)ぶりに、観測隊員全員が日本から観測船に乗船しての出国となった。
南極地域観測事業は、1955年に閣議決定された「南極地域観測への参加および南極地域観測統合推進本部の設置について」に基づき、関係各省庁が連携して研究観測や輸送などを分担して進めている国家事業。南極の昭和基地では様々なデータが数十年にわたって観測されており、地球の環境変動の解析に貢献している。
第62次観測隊は、11月20日、海上自衛隊横須賀地方総監部内の桟橋から、沖合に停泊する南極観測船「しらせ」にボートで移動し、昭和基地に向け出港。新型コロナウイルスの感染防止のため、観測隊員は出発前、2週間隔離されるなどの対策がとられたほか、他国に寄港せず(燃料補給しない)、日本と昭和基地間を単純往復する計画となった。観測隊は12月中旬に昭和基地に到着する予定。隊員編成は44名(夏隊13名、越冬隊31名)で、越冬隊員として東京大学大学院理学系研究科の小新大さん、福岡大学理学部所属の柴田和宏さん、琉球大学総務部職員の金城順二さんらが参加している。
また、南極地域観測統合推進本部は、2020年11月2日、2021年度派遣予定の第63次南極地域観隊長及び副隊長(2名)を決定した。第63次南極地域観測隊長(兼夏隊長)には、国立極地研究所南極観測センターの牛尾収輝教授、副隊長(兼越冬隊長)には、法政大学社会学部の澤柿教伸准教授が就任した。私立大学所属研究者としては史上初となる。