摂南大学電気電子工学科の西恵理准教授は、住友ベークライト株式会社と2021年から「乳児用哺乳センシングデバイス」に関する共同研究を実施し、赤ちゃんの舌の動きを計測することで舌を動かして母乳を飲む力である吸てつ力の可視化に取り組んできた。この共同研究の成果として、住友ベークライトが「哺乳センシングデバイス・システム」を開発し、複数の施設で試験導入を開始。2027年の製品化を予定している。

 母乳育児は赤ちゃんの健康や成長に重要な役割を果たす一方で、吸てつの状態が分からない場合、母親にとって育児は大きな負担となることがある。これまで、吸てつ状態の把握は、簡単に測定できる方法がなかったため、人の主観的な感覚に頼ることが多い状況だった。このような背景から、近年では科学的な根拠に基づいた育児支援の必要性が高まっている。

 西准教授は、赤ちゃんの舌の動きの計測に長年取り組んできた。この知見を基に、住友ベークライトと共同研究を実施し、同社のDuraQ®導電ペーストの技術を生かした「哺乳センシングデバイス・システム」の開発に成功した。「哺乳センシングデバイス・システム」は、赤ちゃんの舌の動きを計測・解析することで、吸てつの状態を客観的に評価できる画期的な製品。これにより、母親や医療従事者が授乳状況を正確に把握し、より適切な母乳育児支援を行うことが可能となる。

 現在、住友ベークライトでは、効果検証結果をもとに産後ケア施設などへの紹介を進め、複数施設での試験導入や一部施設での有料サービス提供を開始した。さらに、舌運動データを活用した母乳摂取量の予測や疾患との関連性に関する研究、高齢者の嚥下障害や構音障害への応用など、幅広い医療・福祉分野での活用も計画している。西准教授は、引き続き同社との共同研究を通じて科学的知見の蓄積と応用を推進し、本技術の社会実装に向けて取り組んでいく。

参考:【摂南大学】赤ちゃんの吸てつ状態を可視化 新開発センサデバイス 科学的根拠に基づいた育児支援

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