群馬大学大学院医学系研究科の多鹿友善講師などの研究チームは6月23日、1つの生物標本から2D顕微鏡画像と3D形態画像の両方を取得する方法を開発したと発表した。
光学顕微鏡による観察法は17世紀に顕微鏡が発明されて以来、一般的な研究手法となっている。細胞や組織の形態を解析したり、タンパク質などの分布を解析するために行われる。その際、生物標本はごく薄い切片にしてスライドガラスに貼り付ける。しかし、切片から得られる情報は平面的であり、標本の立体的形状や3D情報が失われるという欠点があった。
今回、研究グループは、専用のカミソリ刃で凍結した標本を薄切していく機器であるクリオスタット、一眼レフカメラ、電子工作部品からなる装置を開発した。この装置は、標本が上下に動き刃が薄切していく。薄切になった切片はスライドガラスに貼り付けて顕微鏡で観察する。また、同時に標本の切削面を一眼レフカメラで撮影する。一つの標本で500~1000枚程度撮影する。この連続写真はコンピュータ上で3D画像に再構築される。
この装置によって、2D顕微鏡画像と3D形態画像の両方を取得することができ、切片から得られる情報は平面的であり、標本の立体的形状や3D情報が失われるという問題が解決される。
実験では植物からマウス、クワガタムシ、そしてヒトの脳の標本解析を行った。医学を含めた生物学研究において広い分野で普及する可能性を持っているとしている。