北海道大学、九州大学、名古屋大学、関西大学らの研究グループは、マイクロサイズの分子ロボットを「群れ」として利用することで、物質輸送という実働をさせることに成功した。
群れとして行動するロボットは、単体のロボットにはできない機能を持つことができる。これまでに開発されたマクロスケールの群ロボットは、荷物の運搬や集積、構造物の構築など様々な用途に利用されているという。
一方で、マイクロスケールやナノスケールに小型化されたロボットは、その小ささゆえ、実働には至っていない。そこで、本研究では、群れを利用することでマイクロサイズの分子ロボットに実効的な仕事(物質輸送)をさせることを試みた。
開発した分子ロボットはモータータンパク質(駆動系)、DNA分子コンピュータ(制御系)、フォトクロミック色素(センサー系)から構成され、可視光照射下で群れを形成し、紫外光照射下で離散することができる。この分子ロボット約100万体に、数マイクロメートルから数十マイクロメートルまで様々なサイズのポリスチレン製ビーズを輸送させた。
その結果、分子ロボット単体では3マイクロメートル程度までのビーズを捕捉・輸送できたのに対して、分子ロボットの群れではその10倍の30マイクロメートルにも及ぶビーズを輸送することができた。また、単体に比べて群れによる輸送では効率(輸送距離と輸送量)が約5倍に向上することも明らかとなった。さらに、紫外光の照射位置を指定することで、ビーズを任意の場所に集積することも可能とした。このように、群れの利用によってマイクロサイズの分子ロボットが単体ではなし得ない実効的なタスクを遂行できることが実証された。
こうしたロボットは、薬剤の運搬や汚染物質の回収など、医療現場や環境保全といった様々な場面で活躍できるとみられ、今後の応用が期待される。
論文情報:【Science Robotics】Cooperative cargo transportation by a swarm of molecular machines