介護老人福祉施設入所者の入院率が介護老人保健施設に比べ、より高くなっていることが、筑波大学ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子センター長らの研究グループが東京大学、東京都健康長寿医療センターと実施した共同研究で明らかになった。予防可能な入院率も介護老人福祉施設の方が高くなっていた。
研究グループは2012年4月から2013年9月までの千葉県柏市の後期高齢者医療記録、介護レセプト(診療報酬明細書)を用い、介護老人福祉施設である特別養護老人ホーム、介護老人保健施設の入所者計2,065人のデータを分析した。
それによると、入院率は介護老人福祉施設が34.5%、介護老人保健施設が23.8%。介護老人福祉施設の方が10.7ポイント高かった。米国での先行研究に従い、呼吸器感染症、尿路感染症、心不全など17疾病で定義した予防可能な入院率は、介護老人福祉施設が16.3%なのに対し、介護老人保健施設は9.5%にとどまった。研究グループは介護老人保健施設の医療体制が充実していることが影響したとみている。
このほか、予防不可能な入院率は介護老人福祉施設が12.2%、介護老人保健施設が10.6%。入院後の死亡率は介護老人福祉施設が6.1%、介護老人保健施設が3.7%で、ともに介護老人福祉施設が高くなっている。
介護施設入所者の入院率についてはこれまで、十分なデータがなかった。研究グループは全国レベルで介護データベースの研究を進めるうえで大きなきっかけになると期待している。