2024年、創立150周年を迎えた立教大学では、未来に向けた「立教大学ヴィジョン」を策定。伝統のリベラルアーツ教育をさらに磨きあげるとともに、<Global Liberal Arts & Sciences>を究める大学へと進化し続けることを宣言した。なかでも目玉となるのが、「RIKKYO Learning Style 2.0」の展開、フラッグシップとしての「GLAP」プログラムの強化と2026年「環境学部(設置構想中)」の新設だ。1874年の建学以来「普遍的なる真理を探究し、私たちの世界、社会、隣人のために働くことのできる、専門性に立つ教養人の育成」を教育理念としてきた同大学。その伝統と革新について、西原廉太総長に伺った。

 

英国型リベラルアーツ教育で、普遍的な真理を追究
論理的思考、課題発見、未来社会の構想力の土台をつくる

「リベラルアーツというと単に一般教養と思われがちですが、そうではありません。リベラルアーツ教育は、開学以来、本学が最も重要視してきた教育カリキュラムであり、教育理念を体現するものです」。実学志向が叫ばれ、一部にはファスト教養で十分という見方もあるなか、西原総長はこれに異を唱える。

「本学で本物のリベラルアーツを学ぶことは、論理的思考力、課題発見力、未来社会の構想力を身につける土台となります。本来の目標である“世界を読み解き、変えていく力”に通じているのです」

立教大学の歴史は、1874年(明治7年)、米国聖公会の宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズ主教によって設立された「立教学校」に始まる。実利主義の風潮が色濃い当時の日本において、キリスト教に基づく人間教育―本質に迫ろうとする自由の精神、個性を重視し、互いに尊重しあいながら人格を形成する人間教育―に力を注いだ。その核となったのが、主教の出身大学であるウィリアム・アンド・メアリー大学で実践されていた、イギリスのオックスフォード大学、ケンブリッジ大学のリベラルアーツ教育だ。

リベラルアーツとは世界を認識するために必要な学問とされ、自由七科「文法学・修辞学・論理学・天文学・幾何学・算術・音楽」に、聖書を読むための古典三語「ヘブライ語・ギリシャ語・ラテン語」が加わる。欧米ではどの専門教育に進むにしても、習得すべき教養の基本と考えられていた。

「本学では、いまもこれらの伝統的科目を学べるだけでなく、複雑化した現代に必要なリベラルアーツとは何か議論を重ね、言語系科目から専門系科目、海外プログラムまで多様な分野の学びを発展させてきました。社会がグローバル化、複雑化し、価値観も多様化するなか、既存の物差しは役に立たなくなっています。異なる価値観や考え方を理解するために、リベラルアーツを学び、自分のなかの物差しを形成して欲しい」
池袋キャンパスには、赤レンガの校舎、チャペル、学生寮と職員寮、図書館、回廊が今も残る。「学問は古くはキリスト教修道院で学び、カレッジはそこから生れました。修道士の共に祈り、暮らし、学ぶという勤めに由来するものとして、伝統あるカレッジは修道院の様式を備えています。オックスフォード大学にもその設計思想がみられます」

自分で組み立て、自律的に学ぶ、独自カリキュラムを
「RIKKYO Learning Style2.0」へさらに進化

「RIKKYO Learning Style(RLS)」は、2016年から導入された立教大学独自の学びのスタイルだ。全学部生がなりたい自分の姿を思い描き、興味・関心に応じて、10の学びのカテゴリーのなかから、自由に学びを組み立て、自律的に学びを進めていく。

「従来と異なるのは、1、2年次でできるだけ単位をとり、3年次以降は専門の専攻に集中するというのをやめたこと。4年間のなかで導入期、形成期、完成期を設定し、じっくり取り組めるようにしたのです」

10のカテゴリーには、専門分野を追究する学びから幅広い学問領域に触れる科目、海外プログラムや正課外活動などが用意されている。たとえば、導入期である1年次の春に履修する「立教ファーストタームプログラム」では、「学びの精神~なぜ学ぶのか」「学びの技法~どうのように学ぶのか」といった学びの基礎を身につける。

また、実践系の学びも豊富だ。そのひとつが「立教サービスラーニング」で、「世界・社会・隣人」と実際に交わりながら、社会の現場を「教室」として捉える、新しい「学修」スタイルの科目群だ。

「新潟県南魚沼市の栃窪集落での雪ほり体験では、屋根まで覆う雪を掻きだす経験を通じて豪雪地帯の暮らしと限界集落の問題を考えさせられます。金融機関に就職した卒業生からの便りには、「金融商品を紹介するときに南魚沼のおばあちゃんの顔を思いうかべ、人にとって大切なことは何かを考えさせられます」との言葉がありました。座学では得られない、フィールドワークの意義とプログラムの手ごたえを感じた瞬間でした」

RLSは第二ステージへと改革を始動させる。「導入期教育、リーダーシップ教育、データサイエンス教育の充実、サービスラーニングをはじめとする社会連携教育の活性化、さらなる国際化の推進等を基軸とした改革を本格化します」

Global Liberal Arts & Sciencesのフラッグシップとなる
文理融合の「環境学部」を2026年4月に開設

立教ヴィジョン<Global Liberal Arts & Sciences>のフラッグシップとなるのが、2026年に新設される「環境学部」と、「Global Liberal Arts Program:GLAP」だ。

「環境学部は文理融合型の新学部で、本学としては理学部に次いで二つ目の自然科学系に寄せた学部の誕生となります」。リベラルアーツ「自由七科」に天文学、幾何学、算術があるように、世界を読み解くにはサイエンスの知見が欠かせない。

環境学部では、科学を重視した「環境」をテーマとする文理融合のリベラルアーツ教育を展開。GX(グリーントランスフォーメーション)やカーボンニュートラルに貢献する、次代の環境リーダーを育てていく。すでに自然科学系、人文科学系の精鋭の先生方を招き、準備が進んでいるという。

また2017年からスタートした、「GLAP」は、リベラルアーツを英語で学ぶ先進的なプログラム。学部学科に属さず、少人数の授業の中で徹底的に討論し、自分の考え方を鍛え上げ、自らの言葉で発信することを重視している。1年間の留学を必須とするなど、グローバルリーダーを育成するプログラムで、こちらもさらなる強化を図っていく。

「立教大学が語るリベラルアーツとは、学生たちに夢を語り、ヴィジョンを見させる教育です」と西原総長。これを使命として<Global Liberal Arts & Sciences>の拡充に力を注ぐ。

※「環境学部」の掲載内容は設置構想中の予定であり、変更となる可能性があります

立教大学

西原 廉太総長

京都大学工学部金属工学科卒業。2007年立教大学文学部キリスト教学科着任。
2021年より立教大学総長。

 

立教大学

"RIKKYO Learning Style”で「新しい」グローバルリーダー力を習得

立教大学は、1874 年の創立以来、国際性やリーダーシップを育むリベラルアーツ教育を実践。現在は、11学部27学科10専修1コースを設置しています。心の豊かさとリーダーシップをあわせもち、グローバルな課題と社会的要請に対応し、広い視野に立って課題を発見・解決で[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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