東京農工大学と国立研究開発法人物質・材料研究機構の研究チームは、実物大腎臓オルガノイドを組み立て玩具のように構築するための新しいアイディア“Unit construction method”を発表した。

 ヒト臓器を模倣して人工的に作製された三次元細胞凝集体である「オルガノイド」は、慢性的に不足する移植用臓器の代替となることが期待されている。しかし、従来技術による腎臓オルガノイドは未熟で小さく(ヒト腎臓の1%未満の大きさ)、ドナーから提供される移植用腎臓に代えることは未だ困難だ。

 この課題に対し、本研究チームは積み木やブロックなどの組み立て玩具にインスパイアされた腎臓オルガノイドの新規作製手法“Unit construction method”を考案した。この手法では、腎臓を構造や機能に基づいて基本要素(オルガノイドユニット)に分割し、それぞれ個別に作製した後で、ユニットを組み立てて実物大の腎臓オルガノイドを構築する。これにより、従来手法よりもオルガノイドのスケールアップが可能で、複雑な臓器形状も再現しやすいという。

 Unit construction methodのコンセプトに基づき、腎臓のろ過機能を担う糸球体を模倣した腎糸球体様オルガノイドユニットを作製し、複数のユニットを接着したところ、血管内皮細胞の形成する微小血管網でユニット間が接続されることも確認した。この結果は、組み合わせたオルガノイドユニットが組織として成熟する可能性を示唆している。

 Unit construction methodは、実物大腎臓オルガノイドの開発に貢献する有望な手法と期待される。球やシートといった単純な形状に限定されていた従来のオルガノイド作製手法に対し、本手法の確立は複雑な臓器構造を容易に構築できる画期的な成果である。

論文情報:【APL Bioengineering】Geometrically engineered organoid units and their assembly for pre-construction of organ structures

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