静岡社会健康医学大学院大学、東京理科大学、京都大学大学院の研究チームは、特定健診記録と医療機関の受診記録が紐づく医療ビッグデータを活用し、糖尿病および高血圧の発症予防効果に特定健診が与える影響を検証した。
2008年に開始された特定健診(通称、メタボ健診)は腹囲肥満に焦点を当てることで肥満に関連する生活習慣病の発症を予防する取り組みだ。しかし、その制度設計段階から現在に至るまで、生活習慣病の予防効果がどの程度あるのかに関して詳しくは検証されていない。
研究グループは、累計1,000万人以上のデータを保有する民間のデータ会社からの医療ビッグデータ(主に企業からの200以上の健康保険組合データ)を使用。特定健診の対象年齢40~74歳でそれまで糖尿病や高血圧と診断されていない人を抽出し、特定健診を受けた人とそうでない人に分けて追跡した。延べ29万3174人を最長10年(中央値4.2年)にわたり追跡し糖尿病と高血圧の発症の有無を評価した。
その結果、健診ありの人で10.6%、健診なしで11.4%と健診を受けた人の方がリスクが低い傾向にあった。さらに背景因子の統計的な調整を行ったところ、健診を受けた人はそうでない人に比べて、糖尿病・高血圧の発症が0.90倍と低いことが確認された(率としては1.6%減)。さらに追加の解析、例えば糖尿病や高血圧を別個に評価したもの、などでも同様の傾向が示された。
今回の結果は、生活習慣病発症予防に関する知見を与えるとともに、将来的にはより有効な健診制度の検討や医療経済学的な観点からの健診のあり方に関する基礎資料になりうるとしている。
論文情報:【JAMA Network Open】Universal Health Checkups and Risk of Incident Diabetes and Hypertension