北海道教育大学と東北大学の研究グループは、妊婦・不妊治療患者を対象にした新型コロナウイルスに対する不安についてのアンケート調査を行い、特に日本の妊婦が抱える感染不安の高さや、感染不安に影響を与える要因を明らかにした。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、多くの人が生活様式の変更を余儀なくされる中、感染を恐れて医療施設を訪れることを控えている妊婦や、治療の遅れによる妊娠の機会損失といったストレス要因に直面している不妊治療患者は不安を抱えていると推測される。
そこで、本研究では、日本の妊婦・不妊治療患者のCOVID-19に対する不安を明らかにするために、オンラインサービスを利用して、2020年5月19日~6月6日の間に任意のアンケート調査を実施した。有効回答となった妊婦292人と不妊治療患者13人の回答を分析し、新型コロナウイルス恐怖尺度(Fear of COVID-19 Scale)を用いて妊婦・不妊治療患者の新型コロナウイルス感染不安を測定した結果、妊婦・不妊治療患者共に高いレベルの不安を抱え、特に妊婦においてその傾向が顕著だった。
妊婦では、日本人とイランにおける妊婦の不安を比較したとき、日本の妊婦の不安のスコアはイランの妊婦よりも有意に高かったという。また、各変数と不安との関係を分析した結果、「買い溜めなどの備蓄行動」、「体調チェックなどの日々の自身の健康をモニタリングする行動」、「最も重視する情報源」の3つが感染不安を高める要因となることがわかった。インターネットやSNSを重要な情報源とみなす妊婦は、新聞やテレビなどの伝統的なメディアを重要な情報源とみなす妊婦に比べて不安感が低かった。
本研究は、妊婦の感染不安の構造に関する知見を示し、妊婦の心のケアの必要性も示唆しているといえる。