山極:いよいよ女子寮を改築します。きれいになり収容力も増す。女子学生の割合も増えています。とくに工学部の建築やかつての土木系(地球工学科)ですね。もともと医学系は多いし、教育でも女子の比率が高くなっています。理学部も私のころは300名のうち8名だったのが今は一割になりました。

農学部も、農業を志向する女子が目立ってきたこともあり、増えています。京都は市民が学生を手厚くサポートする。特に女子学生にはみな注目しています。東京にいるのとは全く違う雰囲気を味わえ、親からも独立していけますから、ぜひ来てほしいと思います。

鵜㟢:本校の生徒には男子校の生徒のようなところがあります。チャレンジ精神に溢れ、好奇心も強く、何かやりたいと思っている生徒が多い。人生最大のカルチャーショックは、女子学院に入学したときだったと言う卒業生もいるほど、個性的な生徒が集まっています。京大にお世話になる生徒が一昨年は多かったですが、昨年はそれほど多くなくブームにはなりませんでしたが、特色入試には反応し、今年もその勢いは続いているようです。いろいろな大学から出張授業などのお話をいただきますが、生徒は学校を介しての情報にはあまり触手を伸ばしません。

自分でオープン授業などを見つけて入り込んでいくことに喜びを見出すのが主流のようです。首都圏の大学に進学する生徒が多い中で、遠方に行きたいという生徒もいますが、保護者がなかなか離したがらないのと、外的な要因で諦めることもあります。口にはあまり出しませんが、小学生で塾に通い、その後6年間、私立の授業料を払ってもらっていますから、親にずいぶん経済的な負担をかけていると考えるのでしょう。学校としては、生徒が元々持っている興味・関心をできるだけ持ち続けられるように指導しています。生徒は目標を決めるとそれに向かってまっしぐらになり、それらを一つずつ削ぎ落としていきます。

しかし将来、それらがどういう形で役に立つかはわかりません。ただ、柳沢先生のところと同じで、あまりこちらが言うと乗ってきませんから、言い方には十分注意しています。

鵜﨑 創 校長先生(女子学院中学校・高等学校)

鵜﨑 創 校長先生(女子学院中学校・高等学校)


 
山極:生徒が選んでくるのは先生ですか、学問のタイトルですか。

鵜崎:学問のタイトルに先にピンときて、そこから研究内容や先生に関心を持つようです。

山極:両方必要だと思いますが、これからの学問は、教える側と学ぶ側が一対一になることが大事ですから、先生がすごく重要になってくると思います。そこで附置研でおもろい研究をしている先生たちに発表してもらって高校生との対話の機会を設けたり(京都大学附置研究所・センターシンポジウム「京都からの提言」)、変人を自称する先生の研究に芸人がツッコむ『京都大学変人講座』というのをやっています。

一方で、この先生の下で学びたいという気持ちを抱かせるような人をどんどん作らないといけないとも思っています。東京でもやれば高校生は来てくれるでしょうか。

鵜崎:見つけたら「私が」と。でもみんなで一緒に行こうとは思わない。自分だけが知っていることに心地よさを感じているところがありますから。

齋藤:本校には小学校でリーダー的な存在だった子と、全くそういうこととは無関係だった子が入ってきますが、前者の中には、全員がリーダーになる必要はないとわかり、自分でそれまで意識してこなかったような能力に気づく子も出てきます。それはそれで悪いことではありませんが、最近少し気になるのは、「輝けない」と不満を漏らす生徒がいること。成績もピカピカで何をやっても目立って、親子ともにみんなからすごいねって思われないからつまらないのだという意味のようです。

もちろん6年間の間には、積極的にやろうという子と、そうでない子とは出てきます。全員に自己肯定感を持ってもらえるよう努力しているのですが。文化祭、体育大会は、本校でも立候補した実行委員が運営していきます。女性教員が多いので、いきおい細かくなりすぎたり、母親になりすぎたりしてしまうきらいもあります。教員が乗りこえるべき壁になることは必要ですが、生徒の自由な発想を妨げてはいけないと、自分たちでも注意しています。

母親の影響は、男の子ほどは強くないと思います。同性である分批判的で、「あの人の言うことは気にしないでください」のような言い方をする生徒もいますが、それはそれで正しい成長かなと思っています。大学で地方に行く場合、東京にいるとほとんどの学問が地元の大学にありますから、保護者を説得する必要があります。その際の切り札は「医学部に行くから」が多い。親御さんが少しずつ子離れをしていくにはそれなりの理由も必要です。「この大学のこの先生の下で学びたい」などというのもいいと思います。保護者を説得するのも子どもの成長につながるかなとも思っています。そこで親が立ちはだかってはいけませんとお伝えしますが、子どもに「どこでもいい」と言いながら、親の希望を叶えるよう求める例もあります。

女子生徒には男子生徒とは違う力をつけてほしいと思います。女子校にいる間は、「女のくせに」も「女の割に」も言われずに過ごしていますから、大学や社会でそう言われた時にめげない強さが必要です。また結婚、出産でキャリア上、足踏みをすることは必ずありますから、「後ろに下がったのでは?」と思った時も、足踏みを続けていたらいつか前に出られると考えるしぶとさも必要です。それがないと、どんな仕事も続けていくことはできません。そういう強さとしぶとさを、中高の守られている間に身につけさせてあげたいと思っています。0か100かしか考えられないのが優等生の一番の弱点ですから。

齊藤 由紀子 校長先生(桜蔭中学校・高等学校)

齊藤 由紀子 校長先生(桜蔭中学校・高等学校)


 

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京都大学

「自重自敬」の精神に基づき自由な学風を育み、創造的な学問の世界を切り開く。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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