次に登壇したのが、獣医学部で病理学研究室を担当する上家潤一准教授で、演題名は「比較病理学から考えるAAアミロイド症研究」。発表では、いまだ全貌が明らかになっていないAmyloid A(AA)アミロイド症について、麻布大学で発見された世界で4例目の豚AAアミロイド症をきっかけに解明されつつある、アミロイド線維形成能の高いSerum Amyloid A(SAA)を介した、ヒトを含めたほ乳類に共通する病理発生機序について、現状までの成果が紹介された。

 3番目に登壇したのは、生命・環境科学部で環境衛生学研究室の関本征史准教授で、演題名は「ペットフードから変異原が検出される? コンパニオンアニマルの発がんとの関わりを探る」。本プロジェクトは、ドッグフードに含まれる発がん性物質の定量や、そのイヌにおける遺伝毒性を検証し、摂取にともなった発がんリスクの可能性を検討したもので、発症リスクを低減させる対策の必要性と、その成果をヒトの発がん予防へ応用させていく展望が発表された。

 午前の部で最後に登壇したのは、獣医学部で伴侶動物学研究室を担当する茂木一孝准教授で、演題名は「犬との共生は細菌叢を介してヒトのメンタルヘルスを促進している?」。ヒトはイヌとともに暮らすことで、どれほどの恩恵を得ているのかをテーマとした本プロジェクトでは、思春期児童のメンタルヘルスを調査する世田谷区・調布市・三鷹市での大規模コホート研究に参画し、思春期の心の発達とイヌ飼育との関連性を調査。その結果として、仮説段階ではあるものの、ヒトとイヌが長年の共生のなかで、メンタルヘルスを良好に保つ細菌叢を共有してきたことを明らかにしたことが紹介された。

 続いて午後の部では、招待講演として英語セッションを実施。東京都医学総合研究所で心の健康プロジェクトプロジェクトリーダーを務める西田淳志氏、英国・マックマスター大学のPaul Forsythe氏、米国・テキサス大学のShelly A. Buffington氏、理化学研究所生命医科学研究センターで粘膜システム研究チームリーダーを務める大野博司氏ら、4名による講演が行われ、大勢の学生や一般市民らが最新の研究成果に熱心に耳を傾けた。

 また、午前・午後の部の間には、麻布大学が推進するブランディング事業に関する記者懇談会も実施された。

 この席では浅利学長から、麻布獣医学園128年の歩みについての紹介に続いて、ブランディング事業統括者である獣医学部の菊水健史教授が、ヒトと動物の共生をテーマに、SDGsに基づいたヒトと動物の長期的な共生や、ヒト・動物・環境の健康の維持などにかかわる研究成果、一般社会への応用展開などについて解説。ほかにも、獣医学部の阪口雅弘教授による、イヌの細菌叢からのアレルギー抑制細菌の探索に関する研究や、午前の部でも登壇した上家潤一准教授による、ヒトと動物の共進化遺伝子の同定に関する研究について解説が行われた。これらの発表のあとには、学長や発表者と直接意見交換できる場が設けられ、麻布大学が取り組んでいる研究が、今後どのように発展し、その成果が社会に還元されていくのか。さらには、ヒトと動物がともに生きることで開かれる未来について考える、非常に有意義な時間となった。

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麻布大学

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麻布大学のルーツは、明治23年(1890年)、與倉東隆によって東京の麻布(現 港区南麻布)に開設された「東京獣医講習所」にさかのぼります。1950年に麻布獣医科大学として開学、1980年に麻布大学に改称。麻布大学では建学の精神「学理の討究と誠実なる実践」のもと[…]

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