「理高」と言われる中で農学系は伸び悩む


 このように理系分野は人気がありますが、実は農学系の志願者数は伸びていません。それが冒頭の“ほぼ”につながっています。1990年代半ばには、バイオ・テクノロジーが注目され、バイオブームとも言える状況を背景にして農学系人気が高まりましたが、ここ数年は落ち着いています。近畿大学の研究成果によって水産系に人気が集まった時期もありましたが、農学系全体としては人気が伸び悩んでいる状況です。理由については識者から様々な指摘がされていますが、実際のところはよく分かっていません。ただ、15年ぐらいの単位で見ると私立大学の理系分野の総志願者数に占める農学系志願者数の比率は低下しています。言わば市場シェアの低下です。実はその観点でみると医療系(含む医学部)も市場シェアは低下しているのです。では、どこが伸ばしているのかというと工学系の情報・通信系です(建築系も伸びています)。今後、受験人口の減少が本格化しますので、市場規模が縮小する中でのシェアの低下と言ってしまうと希望が見えませんが、実は今は人気の情報系も2008年頃は不人気学系の代表格でした。そのため、いずれ農学系に再び人気が戻る可能性がないとは言えません。あるいは“食”のキーワードで近接する家政系と受験生を取り合うことになるのかも知れません。実はこの家政系の分野の方が、農学系よりも難しい課題を抱えているようにも見えますが、その話はまた別の機会にしたいと思います。

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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