高校生へのメッセージ

社会課題に敏感に。文系こそデータサイエンスの基礎、数学を

先を見通せない激動の時代と言われる今、その狭間で辛い思いをしている人たちがたくさんいます。一人の力では難しいとしても、みんなで力を合わせて社会課題を解決していこうというマインドを持ってほしいと思います。

私の専門とも関連しますが、今、話題のAI、データサイエンス、統計と言ってもいいかもしれませんが、これらについては、どんな分野を目指す人も最低限の知識、リテラシーを持っておくべきだと思います。世の中にある膨大なFACTを分析できる時代なのですから、やはりそれを使って、新しいこと、新しい価値を生み出していくべきだろうし、事実、誰にもそのチャンスはあると思います。文系だから数学はやらなくていいのではなくて、文系だからこそやっておく。そうしないとAIもデータサイエンスもわからなくなり、ベンチャーも起こしにくいと思います。

 

意見のぶつかりあいを怖がらず、知的アドベンチャーを楽しもう。

他人と意見がぶつかり合うのを怖がらないでほしいと思います。なにも人格の否定、人格をぶつけ合うわけではないからです。人それぞれ意見は違って当たり前。同じでなければならないと思うから苦しんだり、敵対したりするようになる。ではその違いをどう乗り越えればいいのか。《正反合》、いわば弁証法的に、譲歩するのではなく、両方が成り立つ方法、解を、一段上に上がったところで探す努力をしてみてください。それはきっと、新しい価値の発見につながるはずです。まさにそれは、知的アドベンチャーというべきもので、世の中にこんな面白いことはないと思います。

探究心を鍛えるのは、授業でだけでなく、サークル、部活でもいいと思います。自分が興味のあることをとことん追求することです。サッカーなら、PKにこだわって、とにかく絶対外さない方法を考えるとか、ドリブルの奥義を窮めるというのでもいいでしょう。3年間なら3年間、主体的に一生懸命取り組んだ経験は、探究心を育て、自分に対する自信にもにつながるはずです。

 

挑戦をもっと自由に。その場その場で努力すれば道はおのずと開ける。少し私のエピソードも

学園ビジョンR2030では、「挑戦をもっと自由に」を掲げています。自分の心の中の気づかないボーダー、あるいは制約を明らかにして、それを乗り越えるべく挑戦しようということになります。人も社会も制約が多すぎると、硬直化してしまいます。「こうでなければいけない」「こうあるべきだ」と言い過ぎると、息苦しくなる。世の中、それほどたくさんの制約が必要なのか。多くは、自分たちが勝手に作っているものではないのか。それなら一度外してみる、そういうチャレンジをしてみたらどうだろうか、ということです。

自分のことを少し振り返ると、大学を卒業して就職後、心理学出身者として、避難行動をモデル化したシミュレーターの開発に携わる一方、研究者の会話についていけるよう専門的知識を必死に身につけました。30代になって、米国・スタンフォード大学に研究留学し、人工知能の研究に携わりました。そんな研究と企業でのマネージャー職に従事するなかで、研究への思いと共に、「人を育てたい」という思いも募りました。ちょうどその頃、立命館大学が情報理工学部を新設。24年間の企業人生を終え、大学での教育と研究を手掛ける次のステージへの挑戦を決めました。 幾度か転身を経た経験から一つ言えるのは、その場その場で全力を傾ければ、道はおのずと開けてくるということ。違う環境に身を置けば、自分の意識も、ものの見方も変わってくるということもあります。挑戦を恐れないことです。

 

学校法人立命館総長
立命館大学長
仲谷 善雄先生

P r o f i l e

1958年大阪府生まれ。1981年大阪大学人間科学部卒業。1989年神戸大学で学術博士を取得。2004年より立命館大学情報理工学部教授。情報理工学部副学部長、総合科学技術研究機構長、情報理工学部長、学校法人立命館副総長・立命館大学副学長等を歴任し、2019年より現職。専門分野は、防災情報システム、人工知能、認知工学など。

 

 

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立命館大学

グローバル・アジア・コミュニティに貢献する多文化協働人材の育成

1900年創立、中川小十郎の精神を引き継ぎ、建学の精神である「自由と清新」のもと、グローバルな存在感をもち、地域に根ざした私立総合大学です。「未来を信じ、未来に生きる」の精神をもって、確かな学力の上に、豊かな個性を花開かせ、正義と倫理をもった地球市民として活躍[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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