国立大学の一般選抜は「情報」必須で6教科8科目がスタンダードに

大学入試センターの発表により、課題となっていた旧課程生への対応が決まったことで、国立大学協会が、国立大学の一般選抜では原則として「情報」を必受験科目とし、6教科8科目を基本パターンとすることを決めたと報道されました。正式な決定は1月末の国立大学協会総会でなされるとされています。もちろん国立大学協会も「情報」科目への取り組みは高校間で差が大きいことも理解していますが、それは国立大学協会が対応する問題ではなく、文部科学省や各教育委員会が対応すべき問題だとして、今回の決定に至ったようです。

確かにそれは正論ですが、高校で進学指導を行う現場では、悩みの種がまた1つ増えたと言うのが実感だと思います。多くの高校では「情報Ⅰ」は、高校1年生で履修するのが一般的です。英語、国語、数学などのように学年が進行しても、学習内容に関連がある場合は、高校1年生の時に履修した科目であっても、知識や思考はつながっています。ただ、「情報Ⅰ」の場合はそうではありません。履修してから、しばらくのブランクを置いて、高校3年生になってもう一度、試験のための勉強を始めるのは新たな負担と言わざるを得ません。

これが旧課程生となれば、現役生よりもさらに1年以上のブランクが開いているため、さらにその負担は重くなります。仮に各大学が「旧情報」の配点を低く抑えたとしても、必受験科目としての重みがなくなる訳ではありません。

 

 

「情報」必受験を嫌い、2025年度入試を受験する既卒生は減少する?

かつて新課程入試は旧課程で学習した受験生には有利になるとされた時期もありました。学習指導要領が改訂される度に学習する内容が減っていたためです。これは学習内容の削減ではなく、“精選”と言われていました。しかし、2000年代初頭の「学力低下論争」以降は、必ずしも旧課程生が有利だとは言えない状況になってきています。

また、受験生の立場で考えても、自身が高校時代に学習した科目とは異なる科目の受験対策をしなければならないことや、同じ科目名でも内容が変わっているケースもあり、それだけでも大きな負担です。今回は、さらに「旧情報」必受験が加わりますので、2025年度入試に再チャレンジするのを嫌って、現役(2024年度入試)の時に志望を下げてでも大学に入ってしまおうと考える生徒が多くなることも予想されます。

ただ、全ての受験生が国立大学を志望する訳ではありません。難関私大を目指して再チャレンジする受験生もいます。しかし、大学入学共通テストを必受験とする入試方式をメインとする難関私立大学は増えています。そのため、今後の難関私立大学の「旧情報」への対応が注目されるところです。

それに加えて、予定では2022年の秋冬頃とされている「情報」科目の試作問題の公表は注目度大です。「旧情報」も試作問題が公表される予定ですので、プログラミングを扱わない「社会と情報」の選択問題の内容によっては、既卒生が有利となる可能性もあります。得点調整が実施される予定になっていますが、平均点差が20点以上にならず10数点の差に収まり、得点調整が行われなければ既卒生は、そこでのアドバンテージを保ったまま2次試験に臨むことが可能です。逆に試作問題が新課程「情報Ⅰ」寄りの出題内容だった場合、2025年度入試では既卒生が本当にいなくなってしまうかも知れません。

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/株式会社KEIアドバンス コンサルティング部 部員
/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンスは河合塾グループのため、膨大な入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査が可能なこともあり、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援など設置者を問わず多様な依頼が日々多く寄せられる。
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