企業と大学が共同でプログラムを策定
長期の就業体験でリアルを学ぶ「コーオプ教育」
PD教育プログラムで培った力を、実践・応用する場として導入されたのが「KITコーオプ教育プログラム」だ。コーオプ教育(Cooperative Education.)は「大学のカリキュラムと、これと同レベルの高い完成度の教育価値を持つ就業体験」が融合したもので、20世紀の初めにアメリカで始まった産学協同教育だ。金沢工業大学では2020年から導入し、世界標準コーオプ教育(CWIE)に準拠したプログラムとしては、国内で初めての実施となった。
一般的なインターンシップと異なるのは、企業主導ではなく、教育主導の「正課教育」である点。また、大学と企業が共同でプログラムを策定していることだ。学生は企業から報酬を得て業務に従事し、指導教員と企業側の実務家教員によって、総合的な学修評価が行われる。
プログラムの流れとしては、まず、企業の第一線で活躍する技術者を実務家教員として招き、事前教育(全7回の寄付講座)を行ったあと、学生を選抜。選ばれた学生が4ヶ月から1年にわたって、企業で一社員として実務に従事する。学生は派遣先の企業で、最先端の技術に触れながら、実社会の課題を発見しその解決に取り組むことで、理論と実践の両方を効率的に学んでいく。
「短期の就業体験ではお客さま扱いで終わってしまいがちです。しかし、このプログラムでは、長期間社員として雇用して頂くかたちになるので、上司や先輩の指導を受けながら、組織の一員としての姿勢や、チームでの仕事の進め方を身につけることができるのです」
現在、コーオプ教育プログラムの協力企業はNTT西日本、鹿島建設、NECグループなど10数社、企業からの問い合わせは年々増えているという。加えて、研究室の指導教員の推薦により、特定の研究を行うために企業へ派遣されるケースもあるそうだ。
実際に参加した学生のなかには、大学での研究に関連する業務で成果を出した学生、企業とマッチングし就職を決めた学生、知識を深める必要性を感じ大学院進学をした学生もいるという。学部4年次または大学院生が対象だが、参加希望の学生は着実に増えている。
「学内ではすっかり定着し、寄付講座を受講する学生のあいだでは“選抜されたい”と競争意識も生まれているようです。現在は情報系の学科を中心に実施していますが、早期に全学科に導入できるよう準備を進めています」
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