国際化推進ビジョンを進める江戸川大学・小口彦太学長は「グローバル化する時代を生きていく若者には、世界の英知に触れ多様な考え方や異文化を理解して世界の人々と協働していくための基礎的な力をつけることが必要」として、既存の海外研修プログラムをさらに発展させ、本気で世界に出たいという学生を支援する留学支援制度「グローバル・スタディ・プログラム(GSP)」を2020年にスタートさせた。

 

 江戸川大学のGSPで学生に問われるのは、その本気度。単なる語学留学ではなく、正規の大学留学として科目単位の取得を目指しているからだ。

 GSPの応募要件は、英検2級レベル以上の資格を取得していること。そして、英語力強化プログラムを活用して所定の条件をクリアすると、6~8か月間留学することができる。この制度では、初年次学費のうち35万円と夏季海外研修の費用が免除、そして提携大学への返済不要の留学費用約300万円(授業料、往復の航空運賃、寮費(食事付))が支援される。つまり、通常の江戸川大学の学費のみで留学することが可能となり、さらに、このプログラムを完遂すると、帰国後の学費半期分55万円も免除されるという留学を考える学生には非常に魅力的な内容となっている。

 GSPを担当するメディアコミュニケーション学部情報文化学科の山口敏和准教授は「大学としては、この制度によって意欲ある学生が経済的な理由で海外留学を諦めずに済む状況にし、留学経験者が多くいるキャンパスにしていきたい」と話す。

 実際に、GSP第一期生としてカナダ・ウィニペグ大学に留学した古宮祐喜さん(社会学部経営社会学科4年)に話を聞いた。

「進学に際して留学することを前提に大学を探し、自身の経済状況から考えて、奨学金や各大学の留学支援制度も比較しながら、江戸川大学に進学することを決めました。正直いうと、この制度がなかったら留学はできていなかったかもしれません。

 高校生の時から、文化交流や異文化比較に興味がありました。それは、高校時代に出会った外国の友人や外国で生まれ育った日本人の友人の行動や考え方について、理解しがたいものがあったからです。それが何に起因するものなのか、それを知るには、やはり英語を使ってその人達がどのように物事を考えているかを知らないと、本当の意味で理解できないではないか。もちろん、様々な研究や書籍から国内でも知る機会はいくらでもありますが、机上ではなく、実際に自分で体験し肌感覚で知ること、それが大事だと思っていたので留学したいと考えていました。

 GSPの応募要件に、英検2級以上とありますが、私は入学時にTEAPで225点のスコアを持っていました。英語力強化プログラムでは、1年次は基礎的な文法事項を確認・整理しながら、2年次になると、留学条件であるTOEFLのスコアをクリアするために試験に向けて語彙力をはじめ、4技能のスキルを鍛えます。その授業から難易度がかなり上がったように思います。
TOEFLは、テストの性格上、大学での学びに必要な英語力を問われる試験なので、そこに適応していくのはとても大変でしたが、「Academic Reading」で、英字新聞から題材を持ってきて読んだり、講師の方々が様々な資料も作成してくださって、それらを消化したりもしました。2年生の最後には「English for Academic Purposes」の授業内で自分の専攻に関する論文を一つ読んで、その内容をプレゼンテーションするという作業を1か月半ほどかけてやりました。

 おかげで、留学中の後半、冬学期にはウィニペグ大学の学部生とビジネスの基礎を学ぶことができました。ウィニペグ大学での授業では、やはり少人数でのディスカッションやプレゼンテーションが多く、そこは日本での授業とはかなり大きな違いだと感じましたが、ちょうど私が江戸川大学へ入学した時期がコロナ禍と重なり、授業はオンライン中心のど真ん中のような状態だったので単純な比較が難しいところではあります。

 学期ごとに、学生の顔ぶれもかわるのですが、私が受講した秋・冬学期の特に冬学期はいろいろな国からの学生がいて、その違いも興味深かったです。行動一つとっても、書籍や比較文化の授業などで知っているつもりではいましたが「やはり、見てみないとわからないな。これ本当に違うんだな」と実感できたのは、とても貴重な経験でした。

 留学して見習いたいと思ったのは、ショッピングモールの店員さんを見ていても仕事の時間を常に楽しんでいる様子や、友人と話をしていても本当に裏表なく相手の意見を尊重する姿勢が根付いているところです。日本だと初対面の人とは少し距離感がありますが、留学先ではみんなが本当にフレンドリーに接してくれて、もちろん文化の違いもあるとは思うのですが、そういう場面で固くなる必要が全くないことも学びましたし、ファースト・インプレッションがその後の関係性に影響するのも感じました。それも実際に海外に行けたからこそ文化の違いとして大きく認識できたところだと思います。

 留学してから、自分でも成長を感じているのは、英語を話すことについて余裕をもってできるようになったことです。例えば緩急を付けたり、リズムを付けたり、後はオーディエンスの反応を見ながら進めたり、自分なりのアレンジを加えられるようになったことが大きいですね。ニュースの記事を読む際にも、自分のリソースとなる英語力が上がったおかげでいろいろな捉え方もできるようになりました。

 私の場合、2年生の終わりに留学派遣の条件であるTOEFLのスコアを取得しましたが、少しイレギュラーで、3年次に就職活動を終えて内定をいただいてから留学をしました。4月には社会人となりますが、今後、会社で海外展開などがあれば、一番最初に手を挙げられるかもしれないと思っています。

 日本の常識が通じない環境というのは、ものすごくいい経験になります。例えば、日常の車の扱い方一つとっても、カナダの車はみんなボコボコでびっくりしました。日本に帰国したとき、空港の駐車場の車を見てほっとしたのを覚えています(笑)。留学を考えている方は、是非、体当たりでそういう違いを感じてほしいですし、その違いに驚きや学びがきっとあると思います」
古宮さんの話から、彼の本気で学ぶ意欲が希望を叶える支援を引き寄せたようにも感じられた。

 学務部国際室の袴田渉室長は「GSPは、まだ古宮さんという第一期生を送り出したばかりです。様々な要件もありますが、臨機応変に対応しながら本気で世界に出て行こうと学ぶ意欲の高い学生に多くの留学の機会を提供できるように、今後もブラッシュアップしていきたいと考えています」と話した。

江戸川大学

普遍的な教養と、時代が求める専門性を身につけ、将来は幅広い分野で活躍

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大学ジャーナルオンライン編集部

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