大学によって学生への支援体制はさまざまだ。和洋女子大学では、AIや学習支援アプリも取り入れながら学生支援を行い、学生たちのそれぞれの夢や目標に寄り添った教育を行っている。内容や狙いについて家政学部健康栄養学科教授で、教務部門長を務める多賀昌樹教授に話を聞いた。

大学での主体的な学びを支える、入学時からのきめ細かなサポート
大学の講義は、中学や高校とは大きく異なる。中学や高校では、決められた教室に行き、時間になると先生が来て授業を行い、終わると次の授業、といったように1日が進む。習熟度授業や選択式の授業などの例外はあるかもしれないが、基本的には同じクラスの人は決められた教室で同じ授業を受ける。大学では、自分が受けたい講義を選択し、自分だけの時間割を作る。講義の時間に合わせて指定された教室に行き、講義を受ける。今まで中学や高校でやってきたスタイルと違うため、戸惑う人や履修ミス(必修講義なのに選択していない、履修上限の超過など)も起こりやすい。大学の敷地も広い場合が多いので、迷子になるケースもある。しかも入学直後だと、初対面の人ばかりで友達もいない。
「和洋女子大学では、教務課が主催する資格などのガイダンスに加え、担任制を設け、4年間同じ先生にさまざまな相談をすることができます。また、学生8名ほどに1名の割合でアドバイザーの教員が付き、どの科目を取ればいいのかなど、履修の相談や入学後の心配事などの相談に乗っています」
お互いに顔が分かり、細かい相談にも乗ってくれるアドバイザーは、学生にとって心強い存在になってくれそうだ。入学式終了後、数日中に顔合わせを行い、その後も年に2回ほど面談を行い、履修登録以外にも、成績や生活面などの相談に応じている。不安を抱えた1年生が多い4月は、教務部職員もピンクのジャケットを着て構内を巡回し、困っている学生の対応にあたる。
また、全員必修の基礎ゼミでは、20人程度のクラスで、レポートの書き方、プレゼンテーション資料の作り方、発表の仕方、これから学修を進めていく上での目標設定の仕方などに加え、学園の歴史などを学び、大学における学びのベースとなる力を修得するという。
普段の講義も20人から30人規模の授業もあり、学生と教員の距離の近さは、双方が感じているようだ。講義中や講義後に加え、学習管理システムを通じても質問できるなど、学生が教員に相談しやすい環境が整っている。
独自ポートフォリオ「わよJam」で4年間の学びと成長を可視化する
2023年度から和洋女子大学では、学生向けの独自のポートフォリオ「わよJam」の本格運用を始めた。定期テストやレポートの結果などの学修成果のほか、自分の目標、課外活動の記録なども登録し、各学科で設定されたディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)にどれだけ到達できているか、今後どのような部分を修得すべきかがレーダーチャートやグラフなどで、可視化できる。学生は、次年度の履修計画のほか、自分探しや就職活動にも活かせる。
「学生自身が大学で何を身につけ、どう成長したかを実感でき、教員も教育の成果を振り返る機会になります。さらに、その結果を教員間で共有し、授業やカリキュラムの改善につなげることで、4年間を通じて学生の成長を支える教育を目指しています」
AIも活用しながら、自分で考える力や人間性も身につける
近年、急速に私たちの生活に浸透しつつあるAIについて学ぶことも大学生活で求められることのひとつだ。2028年度からは、全学部で文部科学省が推進する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(MDASH)」リテラシーレベル※を必修とし、AIをある程度使いこなせるようにする。現在、すでに講義でもAIを活用する場面は多い。ただ、AIに頼りすぎるのも良くないと多賀教授は警鐘を鳴らす。
「私が担当する健康栄養学科で、糖尿病の患者向けに1日1600kcalの食事レシピを作れという課題があったとして、AIを使えば、数秒でできるでしょう。でも管理栄養士として、実際に調理する場合、患者さんの好き嫌いやアレルギー、煮加減、塩加減も考慮しなければなりません。こうした中、少しでも患者さんに寄り添うためには、完全にAI任せではいけないのです。AIの普及により、自分で考える機会が減ってしまうと言われています。AIの知識は押さえつつ、考える力や人間性も育ててあげたいですね」
学生へのサポートも、入学当初は一人ひとりに寄り添い、丁寧に支援することを大切にしている。そして、2年、3年と進級し、学生が成長するにつれて、自ら考え行動する姿を見守り、困ったときにはいつでも手を差し伸べる。学生の成長に合わせて支援のあり方を変えていくことを大切にしているという。「『大学でどう成長するか』は、和洋のキーワードになっています。私たち教職員は、学生が成長できる大学として、皆さんを支援しますし、支援できる体制は万全に整っています。自分の夢や目標がある人は、それに向けて後押ししますし、まだ見つけられていない人には、一緒に目標を探すサポートをしていきます。学生さんたちにどう成長してもらうか、大学生として自分ならではの強みや個性といった付加価値をどう付けるかという点を大事にしています」
付加価値という部分では、自分の趣味や特技も活かせる。絵が好きならその日の献立を描けば、食べる人の食欲が湧く、アウトドアが好きなら災害時の炊き出しなどで力を発揮できるだろう。和洋女子大学では、さまざまな企業との産学連携も行っており、学生一人ひとりが新たな可能性に挑戦できる環境が整っている。
※数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(MDASH)
リテラシーレベル=デジタル社会の基礎的な素養としての初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得することを目指すことを目的とし、文部科学省が2021年から始めた認定制度。和洋女子大学の場合は、2028年度以降に指定された科目を履修・修了することで修得できる。
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/suuri_datascience_ai/00001.htm#01

和洋女子大学 家政学部健康栄養学科 教務部門長
多賀昌樹教授
