
学際融合で研究を社会へ
好適環境水の研究を陸上養殖から宇宙へ
岡山理科大学の好適環境水センターが取り組む陸上養殖は、研究成果を社会に生かす具体例だ。好適環境水とは、淡水にナトリウム、カリウム、カルシウムなど、魚の生存に最低限必要な成分を加えた人工の飼育水※。海水そのものを使うのではなく、魚が生きるために必要な環境を水の成分から考えた技術で、生命科学部生物科学科の山本俊政准教授らが長年にわたって取り組んできた。すでにフグやクエなどの魚を陸上で養殖し、「おかやま理大うなぎ」「理大フグ」「理大クエ」などの名称で発売するなど、研究成果は商品として暮らしの中にも届けられている。

また今春は、2026年度の大学入学共通テスト『英語』のリスニング問題と関連して話題にもなり、研究の蓄積は、全国的な知名度向上への思わぬ波及効果も生んでいる。
この研究には、未来へ向けてさらなる広がりも期待されている。それは宇宙への展開だ。具体的には、JAXAのアルテミス計画に関わり月面の水資源を探査している理学部基礎理学科の新原隆史准教授との連携で、将来、人類が月や火星で生活する際の食料自給を、宇宙養殖で支えられないかというものだ。加計役理事長は、「打ち上げ時の重力や宇宙空間の特殊な環境、無重力状態でも生育し、産卵できる魚介類がいることは確認できていると聞く。将来、月面で、月の水で地球の魚を養殖することも夢ではないかもしれない」と語る。好適環境水センターの陸上養殖技術と基礎理学の研究を結ぶ、学際的な連携の将来像である。
海水魚と淡水魚を一つの水槽で同時に育てることができる
他にも様々な社会実装が
社会実装の取り組みは、陸上養殖にとどまらない。今治の獣医学部では情報理工学部との連携で、ペットの毛が絡みづらい今治タオルpettowelを開発。さらに災害時のペットとの同伴避難を想定し、人もペットも一緒に食べられる食品の開発なども行っている。獣医学部と情報理工学部を結ぶ学際融合が、身近な暮らしや災害時の課題解決に役立っている。
私学教育の使命は、子どもたちが将来、幸せな人生を歩むのに必要な力を身につけてもらうことだと語る加計役理事長。だからこそ、その将来像から逆算し、今の時代に必要な知識や経験を提供することが欠かせない。2040年へ向けては、地域にどれだけ貢献し存在感を示せるかが、私立大学のみならず国立大学にも問われる。社会実装もその大きな課題の一つであることは間違いない。
IB教員の育成でも全国有数の拠点を目指す
入学時の偏差値ではなく、入学した学生の力をどれだけ伸ばすか、つまりは教育の質をどれだけ高めるかが、今後の大学にとってはこれまで以上に大きな意味を持つ※。
岡山理科大学を筆頭に、加計学園全体が教育の出発点に置くのは、本人の「好き」だ。知識をひたすら教え込むのではなく、「好き」を入り口に自ら学ぶ意欲を高めて得意技を磨き、それを自分の強みに育てて社会に役立てる。加計役理事長によれば、この《学びは本来、楽しいものでなければならない》との理念は学園全体に浸透しているとのこと。偏差値を重視する教育、学校・大学選びとは異なる教育理念である。
こうした背景もあり、加計学園の設置校およびグループ校では、2016年に英数学館高等学校、2019年に岡山理科大学附属高等学校が国際バカロレア(1B)プログラムの認定を受けた。大学への合格実績をアピールする教育から、いち早くグローバルスタンダードに準拠する教育へと舵を切っている。
また岡山理科大学は、理科大学でありながら創立者が中学・高校の教員だったこともあり、教育学部を開設し教員養成にも力を入れてきた。最近では大学として、例年200人を超える教員を西日本中心に輩出。学ぶ楽しみを重視する姿勢は、次世代の学びを支える教員にも受け継がれているようだ。
近年は、1B校開設をきっかけに教育学部では国際バカロレア(1B)教員の育成にも力を入れ、全国有数の拠点作りを目指している。これは2028年の新学部開設への一つの導線にもなっている。
大学全体では、どんな時代になっても学生から選ばれる大学を目指して、グローバルスタンダードを念頭に、大学評価の世界基準とされる世界ランキングを意識した様々な改革に着手している。国内で最も知られる「THE世界大学ランキング」の2027年度版では2001+位と3年連続でランクイン、国内では87位タイ、私立大学では26位タイと、早くも成果が表れている(2026年度版の分野別では、生命科学分野、物理科学分野でともに1001十位、学際的科学ランキングでは国内私学5位タイ)。
※現在、中央教育審議会では、大学教育の質の向上を図るための「4段階の段階別評価の導入」などが検討されている。
2028年春以降、半導体コースに新学部、教育学部改革などが目白押し
こうした教育・研究の理念のさらなる実現のために、岡山理科大学は2028年春、半導体を実践的に学べるコースと、理系を基盤にしてリベラルアーツ分野を学べるサイエンス・リベラルアーツ学部(仮称)の新設を構想している。
「半導体コース」(仮称)開設のベースには、2025年に台湾の明新科技大学と結んだ覚書がある。半導体分野で求められる技術修得を目的に、双方で学ぶダブルデイグリー・プログラムを設けるなど、高度な半導体技術者の育成を図る。また附属高校では、高校段階から中国語と半導体を学ぶ、高・大一貫教育も検討しているという。
サイエンス・リベラルアーツ学部(仮称)では、Alを使いこなし、その上で人間に何ができるのかを深く考えることのできる人材育成を目指す。Alが今後すべての学問の基盤になるとの予測の下、Alを使いこなす側になるためのリベラルアーツ教育が重要だと、加計役理事長はその挑戦の趣旨を語る。
2028年には既存の教育学部のアップデートも予定されている。地方部では人口減少に伴い義務教育学校が増加していることを踏まえ、小学校、中学校の教員免許を同時に取得できるようにカリキュラムを改革する。地域の学校の変化に応じ、教員養成のための学びを進化させるのだ。
学内人事では外部の優秀な人材を引き込み、これまでとは異なる発想を取り入れることで、毎年一つでも新しい挑戦を重ねていく文化をつくりたいと加計役理事長。改善で満足せず、改革を恐れず前へ進もうとする姿勢こそが、2040年を超えても地域と社会から必要とされる私立大学であり続けるための条件だとも。この思いは、日頃、教職員に伝えている「変化を恐れず、変化しないことを恐れよう」という言葉に明確に表れている。
加計役理事長
