理化学研究所と熊本大学の研究グループはエイズの原因ウイルスが細胞から細胞へと感染を拡大していく際の新たなメカニズムを解明することに成功しました。これまでの抗エイズ薬とは全く異なる新たなエイズの治療薬の開発につながるかもしれません。

 エイズは免疫細胞がHIV-1ウイルスに感染することで機能不全を起こす病気です。これらの細胞の間で感染が広がっていくことで最終的に免疫が機能しなくなります。これまでは感染が拡大していくのは細胞内で増殖したウイルスが細胞外に放出されるためだと考えられてきました。しかし、近年細胞同士が接触することで直接感染する可能性が指摘されています。ウイルスが一度細胞の外に出てくれれば感染前に無力化することもできますが、細胞同士の接触で感染するとなれば新たな手段を考えなければならなくなりません。

 接触による感染の原因と考えられているのが、細胞膜を貫いている管です。細胞はこの管を一時的につなげることで、活動に必要な物質の交換を行います。しかし同時にウイルスも移してしまうのです。この管を介した接触感染が感染拡大にどの程度影響しているのかを調べたところ、感染拡大の約半分は接触感染であることが分かりました。さらに、HIV-1ウイルスに感染した免疫細胞を詳しく調べたところ、ウイルスによって管の形成が促進されることが明らかになりました。そして免疫細胞が持つM-Secというタンパク質が、ウイルスが持つNefというタンパク質に反応することで管の形成が促進されていることも突き止めました。

 このことから免疫細胞が持つM-Secの働きを抑えることで管の形成を阻害し、感染拡大を防ぐという新たな治療法への道が拓けました。これまではウイルスを標的とした治療が中心だったのに対して、今後は体の方に作用することでウイルスが感染できない環境を作ることが治療の鍵になるかもしれません。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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