岡山大学の研究グループは、閉経関連尿路性器症候群(GSM)において、腟・尿路・腸の3つの部位に共通する細菌叢(マイクロバイオーム)の乱れを発見した。
閉経後女性の約50~70%が罹患するとされるGSMは、腟の乾燥・痛み、排尿トラブルなどを生じ、生活の質(QOL)を大きく損なう。標準治療は腟局所へのエストロゲン投与だが、乳がんの既往などで使用できない、あるいは効果が不十分な症例も存在する。
こうした状況に対し、本研究グループは、細菌叢(マイクロバイオーム)の乱れに着目した。世界12か国で2016~2025年に報告された23研究(計5,027人)を解析することで、腟・尿路・腸の3つの部位の細菌叢の変化を統合的に検討した。
その結果、いずれの部位でも、閉経後には、善玉菌である乳酸桿菌(Lactobacillus)の減少と細菌の多様性の増加という共通の乱れが一貫して認められた。3つの部位に共通する変化から、腟・膀胱・腸が相互に影響し合う「腟-膀胱-腸 軸(vaginal-bladder-gut axis)」という新たな概念の存在が示唆された。
また、エストロゲンの補充は、乳酸桿菌の優位性を部分的に回復させるが、症状の改善とは必ずしも一致しないことがわかった。このことから、GSMは単なる閉経に伴うエストロゲン欠乏の問題ではなく、その背景に腟・膀胱・腸管にまたがる全身的な細菌叢の乱れが関連している可能性が示唆された。
本研究により、GSMを細菌叢、そして「腟-膀胱-腸 軸」という視点から捉え直す枠組みが提示された。この成果は、従来の治療で効果が得られにくい症例に対する新たな治療法や、個別化医療の実現につながる可能性を秘めている。今後は、同一症例において腟・膀胱・腸管の経時的な同時追跡研究を推進することが、GSMの画期的な予防・治療法の確立に貢献するとしている。
