順天堂大学医学部小児科学講座の中野聡助教らは、27の虐待関連行為について養育者の経験と認識を調査した結果、虐待としての認識率が低い行為ほど、実際に行われている割合が高いことを明らかにした。
我が国では児童相談所への虐待相談件数が増加傾向にあるなか、2020年に改正児童福祉法・児童虐待防止法が施行され、保護者や養育者による体罰禁止が明確に定められた。一方で、これらの行為がどの程度行われ、どの程度虐待と認識されているのかという実態を示すデータは十分ではなかった。
そこで本研究では、茨城県内の公立小学校14校・中学校8校の協力のもと、小学4~6年生および中学1~3年生の子の養育者1,098人を対象に、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクトに関連する27の行為について匿名オンライン調査を実施した。それぞれの行為について、養育者に、過去に自分の子どもに行った経験があるか、また、虐待として認識しているかを尋ね、経験と認識の関連を検討した。
調査の結果、例えば骨折や熱傷を負わせる行為については、過去に行った経験がある養育者はいずれも0.1%にとどまり、虐待と認識した割合はいずれも99.9%だった。多くの虐待関連行為では、経験率が低く、同時に虐待としての認識率が高かった。
これに対し、「怒鳴る」は88.3%、「手で叩く」は59.1%、「言葉で脅す」は47.3%の養育者が過去に行ったことがあり、これらの行為を虐待と認識した割合は、それぞれ19.1%、45.7%、55.0%であるなど、一部の行為は経験率が比較的高く、虐待認識が低いことも確認された。虐待としての認識率が低い行為ほど、経験率が高いという強い関連も認められた。
本研究により、体罰が法律で禁止された後も、日本における虐待関連行為の実態と養育者の認識には一部のずれが存在する可能性が示唆された。この結果から、今後の児童虐待予防や子育て支援では、「体罰や虐待をしてはいけない」という一般的なメッセージだけではなく、どのような行為が体罰や虐待に該当し得るのかを具体的に示すことが重要だとしている。
