東京都立大学大学院都市環境科学研究科の大澤隆文教授、大澤剛士准教授が人間社会・心理の中で生物種が消失してしまう「社会的絶滅」を可視化する新たな枠組みを提案し、2022年版の日本版レッドリスト(生物学的観点から野生生物の種の絶滅リスクを客観的に評価してリスト化したもの)に記載された1,155種について社会的な認知度を調べたところ、半数以上が社会的絶滅に近い状況に陥っていることが分かった。

 生物多様性の損失が世界的に進行するなか、限られた保全資源をどの絶滅危惧種に配分するかは重要な課題となっている。これまで絶滅リスクは生物学的な状態を中心に評価されてきた。

 研究グループは生物種が社会的絶滅に至る枠組みを構築し、社会的プレゼンスが時間とともに変遷するパターンを検討、定量的に評価する仕組みを生み出した。レッドリストに記載された生物種をそこに当てはめ、社会的絶滅に陥っているかどうかを判定した。

 それによると、2020年3月~2024年3月のインターネット検索量から人々が個々の生物種にどれだけ関心を持っているかを調べたところ、記載種の半数以上が社会的絶滅危惧種と分かった。生物学的に絶滅危惧種とされる生物では鳥類のオガサワラカワラヒラ、哺乳類のダイトウオオコウモリなど、生物学的な現存種では昆虫のコマルハナバチ、キイトトンボなどが該当した。

 一方、検索頻度が恒常的に高かった種は、地域のマスコットやアニメキャラクター、または高価な食材や観光資源となっており、民間企業からの寄付や支援を受けやすい傾向があった。さらに生物学的な絶滅危惧種と社会的な絶滅危惧種は必ずしも一致せず、生物学的にはごく普通に存在する種であっても、社会的には殆ど認知されていない種の事例も確認された。

 研究グループは、この仕組みで社会に忘れられたり、そもそも認識されていなかったりする種が生物学的な絶滅に向かう可能性を可視化することができるとみている。また生物学的にも社会的にも危機的な種は保全に向けた支援を受けにくい可能性があることから、行政などによる公的な保全の優先対象として考慮する必要性があるとしている。

論文情報:【Conservation Biology】A framework to assess trajectories of societal and biological extinction

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