植物原料のプラスチックをアンモニア水で分解することで、植物の成長を促す肥料(尿素)に変換するリサイクルシステムが開発された。東京工業大学、東京大学、京都大学との共同成果。

 現在、プラスチックは70%以上が廃棄されており、リサイクルは15%以下にとどまっている。こうした中、本研究者らは、カーボネート結合を有するプラスチック(ポリカーボネート)がアンモニアと反応して完全に分解されると化学肥料となる尿素に変換できることに着目。中でも、グルコース(糖)由来のバイオマス資源であるイソソルビドを連結して得られるポリカーボネートは、尿素とイソソルビドに分解できるため、プラスチックを出発原料まで戻して再利用する「ケミカルリサイクル」に加えて、肥料へもリサイクルすることができる。

 本リサイクルシステムのアイデアの実証実験では、最終的に、アンモニア濃度や反応温度といった条件を最適化することで、糖由来ポリカーボネートを6時間以内に尿素とイソソルビドへと完全に分解できるようになった。得られた分解生成物(尿素とイソソルビドの混合物)を用いたシロイヌナズナの生育実験では、尿素が肥料として働き、植物の成長促進につながることが実証された。

 アンモニア水を加熱するだけで反応を促進でき、高価な触媒を必要としない簡便なプロセスであることも、このリサイクルシステムのメリットだ。普及すれば産業界への波及効果も大きいとみられる。
本リサイクルシステムは、「プラスチックの廃棄問題」と「人口増加による食料問題」を同時に解決する革新的なシステムとして期待される。

論文情報:【Green Chemistry】Plastics to Fertilizers: Chemical Recycling of a Bio-based Polycarbonate as a Fertilizer Source

東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

京都大学

「自重自敬」の精神に基づき自由な学風を育み、創造的な学問の世界を切り開く。

自学自習をモットーに、常識にとらわれない自由の学風を守り続け、創造力と実践力を兼ね備えた人材を育てます。 学生自身が価値のある試行錯誤を経て、確かな未来を選択できるよう、多様性と階層性のある、様々な選択肢を許容するような、包容力の持った学習の場を提供します。[…]

東京工業大学

時代を創る知を極め、技を磨き、高い志と和の心を持つ理工人を輩出し続ける理工大学の頂点

東京工業大学は産業の近代化が急務となっていた1881(明治14)年に東京職工学校として設立されました。設立以来、優秀な理工系人材と卓越した研究成果を創出し続け、現在も日本の理工系総合大学のトップにいます。東京工業大学は高度な専門性だけでなく、教養学を必修とする[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。