中部大学の新谷正嶺助教らの共同研究グループ(他に東京大学、UT-Heart研究所)は、人や動物の骨格筋や心筋、鳥や昆虫が羽ばたく時に使う飛翔筋など、激しく伸縮を繰り返す横紋筋の動きを統一的に再現できる数理モデルを開発した。

 横紋筋は複数の階層構造を持ち、その中で収縮する器官が筋原線維、それを構成する直列のユニットをサルコメア(筋節)と呼ぶ。サルコメアはたんぱく質(アクチンとミオシン)が積み重なり個々に伸縮する。筋肉は力が出ない伸びた状態から、アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解エネルギーを利用して、ミオシンが首振り運動しサルコメアを収縮させる。サルコメアには収縮・伸長(弛緩)を繰り返す「自励的振動収縮」の性質がある。

 研究チームはミオシンによる自励的振動収縮の収縮リズムの仕組みを数理的に解析する研究を行ってきた。ミオシンが力学的負荷を受けると逆向きの動力を引き出すと仮定し、2017年に数理モデルにより自励的振動収縮現象の説明に成功した。

 今回、隣り合うサルコメア間で格子間隔をそろえようとする力とサルコメアの長手方向と垂直方向の歪みの逆関係を保とうとする力が、収縮中のサルコメア内のミオシンにかかる力学的負荷を増大させる効果を考慮し、数理モデルを補正した。その結果、サルコメアが振動のタイミングをそろえる際に伝播する波を忠実に再現できた。また、人の心筋や、カブトムシの飛翔筋(ヒト心筋の約5万倍の速さ)の自励的振動収縮を同じ数理モデルで説明できた。

 今回の成果は心不全の事前予知など、医療技術の向上に貢献すると期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Effect of myofibril passive elastic properties on the mechanical communication between motor proteins on adjacent sarcomeres

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