愛媛大学が主導し、東京大学、琉球大学が参加する共同研究チームが、妊娠中の大豆、イソフラボン摂取が子の多動問題のリスク低下に関連するとの研究成果を公表した。

 大豆に含まれるイソフラボンはエストロゲン作用を有しており、胎児期のイソフラボン曝露による子供の発達への影響については、良い影響を与えているという説と悪い影響を与えているという説で議論が分かれている。しかし、妊娠中の大豆、イソフラボン摂取と生まれた子の行動的問題との関連を調べた疫学研究はこれまでに報告がなかった。

 母子における生活習慣や生活環境と健康問題との関連を明らかにすることを目的とした「九州・沖縄母子保健研究」では、平成19年度に1757名の妊婦さんが参加し、母親と生まれた子の追跡調査が行われている。今回、このデータを活用し、5歳時における追跡調査に参加した1199組の母子を対象として、妊娠中の大豆、イソフラボン摂取と生まれた子の行動的問題リスクとの関連を調べた。

 その結果、妊娠中の総大豆摂取が多いほど、5歳児における多動問題及び仲間関係問題のリスクが低下していた。大豆製品ごとの解析では、妊娠中の豆腐やみそ汁の摂取は多動問題との関連が認められなかった一方で、納豆摂取が多いほど多動問題のリスク低下が認められた。同様に、妊娠中のイソフラボン摂取が多いほど、多動問題のリスクは低下していた。

 以上から、妊娠中の大豆摂取が生まれた子の多動問題と仲間関係問題に予防的であり、かつ妊娠中の納豆及びイソフラボン摂取が子の多動問題に予防的であることが示された。この結果に関して、諸外国からの報告など、さらなる研究データの蓄積は必要だが、妊娠中の食習慣の変容により子供の行動的問題を予防できる可能性を示唆した学術的価値の高い研究成果である。

論文情報:【International Journal of Food Sciences and Nutrition】Maternal consumption of soy and isoflavones during pregnancy and risk of childhood behavioral problems: The Kyushu Okinawa Maternal and Child Health Study

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