安定した通信環境の確保も出願資格のひとつと言える

 文部科学省は9月9日付の通知で、オンライン試験で通信障害などがあった場合などには代替措置を講ずるなど、受験生に配慮をするよう各大学に求めています。各大学が入試要項などで通信環境の確保を受験生の自己責任としていることに関連してのことでしょう。ただ、今年の入試では、こうした通信環境を確保することも出願資格のひとつだと理解する必要があります。受験生の自宅に有線のインターネット回線かWi-Fi環境があるかどうか、あるいはそうした環境を準備できるかどうかも評価の対象にされていると言えます。

 オンライン面接の途中で何度も通信が不安定になると受験生は自分の意欲などを十分に伝えることができません。それだけで評価が下がることはありませんが、不利になることは想像に難くありません。中には高校のパソコン室を使わせてもらう受験生がいるかも知れませんが、大学によっては事前に接続テストを行った同じ部屋での受験を求めていますので、それも含めて場所を確保する必要があります。

 また、試験中に第三者が入室すると不正行為と見なされることもありますので、注意が必要です。東京都市大学や実践女子大学などは、通信環境を準備できない受験生のために、キャンパス内にオンライン面接の環境を提供してくれるなど受験生ファーストの対応をしています。

 また、オンライン面接に関して同意書を求める大学も有り、少々厳しいとの印象を持つ受験生もいるかも知れません。しかし、これまでも外国人留学生試験などで海外とテレビ会議を通じて面接する場合は同様の措置がとられており、同意書は特段に厳しいこととは言えません。例えば、実践女子大学の同意書<図1>を見ても、記載されているのはどれも当然の項目で、入試実施の実務的観点からも全て大切な項目です。受験生はこうした同意書を厳しいと感じるかも知れませんが、是非とも理解をしてもらいたいところです。

【図1】クリックして大きい画像を見る

 

オンライン面接は同日に複数受験が可能になる

 オンライン面接については、各大学がすでに詳しい説明等を公表しています。名桜大学のQ&Aなどは他大学を受験する生徒にとっても参考になることと思います<下記URL>。東京都市大学もHPでとても丁寧にZoomの登録などについて説明しています。ただし、東京都市大学は面接試験の事前にZoomに登録した指名の一部を受験番号に変更することが求められているなど指示をよく読んでおく必要があります<図2>。受験生には出願後にこうした操作マニュアルなどが送られてきますので、大変かも知れませんが、忍耐強く読み解くことが求められます。これは面接対策以外に新たに加わる負担ですが、この忍耐強くマニュアルを読む力は、現代人にとっては必須の能力です。受験生には少々酷ですが、オンライン面接で実力を発揮するためには大切な能力です。

【図2】クリックして大きい画像を見る

 

 なお、総合型選抜、学校推薦型選抜の公募制では、他大学などとの併願を認めている大学が多くあります。複数併願をする受験生は、受験大学毎に試験日、受験番号などに加えて使用されるテレビ会議サービスを一覧表にして整理しておくと直前で混乱しなくても済みます。また、オンライン面接は試験会場に出向く必要がありませんので、試験時間が重ならなければ、同日に複数の大学を受験することもできます。この点は、昨年までと異なり、受験生にとって有利な点です。ただし、同じ日にいくつも面接を受けていると、どの大学を受験しているか混乱してしまうこともあります。志望理由などで別の大学の話をするのは致命的なミスになりますので、この点でもリハーサルは大切です。また、大学生の就職活動でもオンライン面接は一般的ですので、目線の置き方など就活に関連したオンライン面接のマニュアルは検索すればたくさん得られます。こちらにも目を通しておくと良いでしょう。

名桜大学Q&A:
https://www.meio-u.ac.jp/admission/exam/assets/qa_online0827.pdf

 

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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