デジタル人材の育成が求められるなか、大学でも情報・デジタル分野の学部新設や教育改革が進んでいる。2026年度には、群馬県内の私立大学で初めてとなるデジタル系学部として、共愛学園前橋国際大学に「デジタル共創学部」が開設された。同学部では「ICT」「マネジメント」「食・健康・暮らし」の3つの専門モジュールを設け、デジタルを軸に幅広い分野を横断して学ぶことができる。今回は、同学部の特徴や設置の背景、一期生の学びについて、村山賢哉学部長に話を伺った。

新設「デジタル共創学部」は、「ICT」「マネジメント」「食・健康・暮らし」の3つの専門モジュールを設置
2026年度に開設した共愛学園前橋国際大学デジタル共創学部は、1年次の学びを通して2年次に「ICT」「マネジメント」「食・健康・暮らし」の3つの専門モジュールから選択するという特徴があり、情報系の中では珍しく「食・健康・暮らし」の分野が入っている。
構想の初期では、「デジタル・グリーン学部」と仮称していた同学部。教育内容を正しく伝えるため、設置構想中に名称を変更した。
「前橋市が掲げる『緑豊かな環境の中で人々がよりよい生活を送るWell-Being』につながる教育を行うため、デジタル・グリーン学部と仮称していました。しかし実際のカリキュラムでは、栄養・食・健康も核のひとつにしていますので、『グリーン』と仮称した結果、多くの方から農学部だと思われてしまいました。もちろん食と農業は密接に関係していますが、農業を体系的に学ぶ授業は設けていません。誤解を避けるため名称を改めました。『共創』には社会で人々とともに生き、新たな価値を創造する、といった意図が込められています」(デジタル共創学部・村山賢哉学部長)
同大学は地域とともにあることを重視している。これまでもキャンパスのある前橋市の方向性を都度取り入れながら、教育を行ってきた。デジタル共創学部の開設も、地域に寄り添い貢献する姿勢の表れだといえよう。

2年次のモジュール選択前に、ミスマッチを避けるためにも、各モジュールの基礎を知る期間がある
カリキュラムにはデジタル、ビジネス、食など幅広い内容が含まれている。2年次には3種類のモジュールから軸となるひとつを選択。どれも定員はなく、希望モジュールに必ず所属できるのが強みだ。
「レイトスペシャライゼーションが全国的に注目されていることからもわかるように、学問をよく知らないうちに専門を決めるとミスマッチが起こる可能性が高いです。とくにデジタルの場合、技術の適応先によって学ぶ内容は大きく異なります。ミスマッチを避けるためにも、モジュール選択前にデジタル・情報や各モジュールの基礎を知る期間を設けました。
また、DXの基礎を身につける『DXモジュール』は全員必修です。デジタル共創学部の全教員が、それぞれの研究分野におけるDXの現状を語る、オムニバス形式の授業もあります」(村山学部長)
それにしても、「ICT」「マネジメント」に並んで、「食・健康・暮らし」が設けられているのは珍しい。
「食は暮らし(環境)や健康とも密接に関係しています。3つの分野をつなげる軸がデジ
タルです。そのため栄養だけでなく、フードトレーサビリティ、ヘルステック、フードテック、スマートシティなど幅広い内容を扱い、人々の暮らし全般のウェルビーイングを実現するための知見を養っていきます」(村山学部長)
すべての部屋の様子を見渡せる 研究や学びの拠点「新6号館(KYOAI CO-INNOVATION HUB)」
デジタル共創学部は理系学部として位置づけられているため、研究活動にも力を入れる予定だ。たとえば食・健康・暮らしモジュールでは、農業や食全般に関するデータ分析などを行う。「おいしさ」について科学的に分析したり、データを活用して個人最適化した健康指導を試みたりと、教員の専門性とデジタルを組み合わせた研究が可能だ。また、3年次と4年次のゼミは、モジュールを横断して履修できるため、各モジュールの専門性を組み合わせた学びも期待できる。
「私はマネジメントモジュールの授業を担当することが多いですが、別のモジュールの学生も歓迎します。たとえば食・健康・暮らしモジュールの学生がゼミに参加してくれたら、フードマネジメントをテクノロジーでよりよくする方法を考えてみるなど、学びの幅が広がるでしょう。モジュールを越えた化学反応に期待しています」(村山学部長)
研究や学びの拠点として、新6号館(KYOAI CO-INNOVATION HUB) も作られた。キッチンスタジオ、実験室、3Dプリント、モーションキャプチャ、ドローンなど、さまざまな最新技術と社会課題を結びつけながら学ぶ。
「新6号館は吹き抜け構造で、すべての部屋の様子を見渡せます。これはひとつの分野の専門性だけで留めず、ほかのゼミや研究室の内容も知ってもらい、つながりを創出したいという想いからです。たまたま見かけた授業の様子がおもしろそうだったから次年度に参加しよう、のように、学生の関心も呼び起こせればと思います」(村山学部長)
共愛学園前橋国際大学の新6号館(KYOAI CO-INNOVATION HUB)は、大小の教室のほか、デジタル×食の学びを実践するキッチンスタジオ、食や健康を研究する実験室、電子工作や3D プリント、モーションキャプチャ、ドローン等の学びに活用するFab-Lab などを設けている
群馬県内の私立大学で初めてのデジタル系学部 一期生は文系だった学生も多く入学
同学部は理系ではあるものの、高校時代に文系だった学生にも入学のチャンスがある。一般選抜では数学を必須にしているが、出題範囲は数学ⅠAに限定。大学入学共通テスト利用型選抜でも、「数学Ⅰ、数学A」または「数学Ⅱ、数学B、数学C」のうち高得点の科目を採用できる。そのため高校では文系だった学生も多く入学した。また、群馬県内からの志望者が多い傾向は学部設立前から変わらないが、栃木県や長野県など他県からの志願者も増えたという。
「群馬県内の私立大学には、デジタル系の学部はありませんでした。進学先を群馬県内で選ばなければいけないものの、デジタルや最新技術について学ぶことはあきらめたくない。そんな想いを抱えた学生にも集まってもらえたらと思っています」(村山学部長)
共愛学園前橋国際大学デジタル共創学部の初年度の男女比は7:3。同大学の前身は女子大学であることや、既存学部が国際社会学部ということもあり、デジタル系とはいえ男子学生が多く集まるのはむしろ珍しい傾向に見える。
