弘前大学の寺嶋公紀さん(大学院農学生命科学研究科修士課程2年)、川瀬陽平さん(農学生命科学部4年)、山尾僚准教授(現在、京都大学教授)、東信行教授(農学生命科学部)、池田紘士准教授(現在、東京大学教授)、野田香織准教授(理工学研究科)は、融雪剤にさらされたアリが、より植食性に変化することを明らかにした。
多雪地域の主要道路では、毎年冬場に融雪剤(塩化ナトリウム;NaCl)が大量に散布される。そのため、主要道路沿いの植物をはじめ様々な生物にNaClの影響が及んでいる可能性があるものの、その実態はほとんどわかっていなかった。
そこで本研究では、青森県の多雪地域を通る国道7号沿い10地点を調査地として設定し、春と秋に土、草本植物(イタドリ、シロツメクサ)、それを食べるクロヤマアリのNa濃度を調べた。
その結果、国道に近い場所ほど、春に土・植物・アリのNa濃度が高くなっていた。また、国道に近い場所ほど、春にアリの栄養段階が低く、より植食性になっていることもわかった。
アリの飼育実験では、Na濃度の高い餌を与えて飼育すると、その後にNa濃度が低い餌を好むようになることが示された。Na濃度は、一般に動物より植物のほうが低い傾向がある。したがって、国道沿いのアリは、融雪剤にさらされることでNa濃度の低い餌を好むようになり、植物性の餌をより多く利用するように食性を変化させたと考えられる。
本研究結果は、冬の融雪剤散布が、昆虫の体内へのNa蓄積に伴って餌の好みを変え、生態系に影響を与えることを示した。人間活動によって、土や植物だけでなく、それを利用する昆虫の行動までも変えてしまうことが明らかになったといえる。融雪剤散布の影響は、多雪地域が広がる日本海側の広範囲で生じている可能性があるとしている。
