国立環境研究所と信州大学の研究グループは、北アルプス穂高岳・涸沢の多年性雪渓について、59年間(1967~2025年)の連続データセットを構築し、面積変動と気象要因を分析した。

 山岳地域に点在する多年性雪渓は、夏を越えて翌年まで残り、下流域の水資源として重要な役割を担っている。多年性雪渓の規模は、秋から春に雪が蓄えられる「涵養」と、春から秋に雪が融ける「消耗」の収支で決まる。雪渓面積の変化は、気候変動の影響を反映すると考えられるが、高標高の山岳域では長期観測が難しく、継続的な把握は困難だった。

 そこで本研究では、定点カメラ写真、現地測量図、空中写真、人工衛星データ、山小屋関係者・登山者の所有写真などを統合し、1967~2025年の雪渓面積の長期連続データセットを構築した。涸沢の谷底の約400×1,000m、標高約2,300~2,700mを対象に、秋季(9月中旬~10月下旬)の画像・図面資料を用いた。紙資料やアナログ写真はデジタル化して地理情報システム(GIS)上で位置を合わせ、従来解析が難しかった斜め撮影画像も新手法で地図上に投影した。各年の雪渓面積を算出し、長期的な変化傾向(トレンド)と年々変動に分け、気象データとの関係を分析した。

 その結果、雪渓面積は年々大きく変動しながらも、長期的には、年あたり約947m2の割合で有意に縮小していた。消耗期の平均気温は明瞭な上昇傾向にあり、雪渓面積の変動と高い負の相関が認められた。一方、涵養期の降雪・積雪量には、観測地点間で共通する減少傾向が認められなかったことから、雪渓面積の長期的な縮小トレンドの主要因は、消耗期の気温上昇に伴う融解量の増大であることが示唆された。

 年々変動には、消耗期の気温上昇による融解量に加え、冬季季節風による日本海側からの降雪と南岸低気圧による太平洋側からの降雪がもたらす積雪量が関係しており、涵養・消耗の双方の過程が影響することが示された。

 本研究で構築した多年性雪渓面積の連続データセットは、国内でも有数の長期記録であり、山岳地域における気候変動の影響評価に役立つ基礎資料となる。多年性雪渓の消失リスク評価のためには、今後も現地観測やモニタリングを長期的に継続する必要があるとしている。

論文情報:【雪氷】Long-term area dynamics of perennial snow patches in Karasawa Cirque, Mt. Hotaka: A 59-year record (1967-2025)

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