北海道大学、九州大学、名古屋大学、関西大学らの研究グループは、マイクロサイズの分子ロボットを「群れ」として利用することで、物質輸送という実働をさせることに成功した。

 群れとして行動するロボットは、単体のロボットにはできない機能を持つことができる。これまでに開発されたマクロスケールの群ロボットは、荷物の運搬や集積、構造物の構築など様々な用途に利用されているという。

 一方で、マイクロスケールやナノスケールに小型化されたロボットは、その小ささゆえ、実働には至っていない。そこで、本研究では、群れを利用することでマイクロサイズの分子ロボットに実効的な仕事(物質輸送)をさせることを試みた。

 開発した分子ロボットはモータータンパク質(駆動系)、DNA分子コンピュータ(制御系)、フォトクロミック色素(センサー系)から構成され、可視光照射下で群れを形成し、紫外光照射下で離散することができる。この分子ロボット約100万体に、数マイクロメートルから数十マイクロメートルまで様々なサイズのポリスチレン製ビーズを輸送させた。

 その結果、分子ロボット単体では3マイクロメートル程度までのビーズを捕捉・輸送できたのに対して、分子ロボットの群れではその10倍の30マイクロメートルにも及ぶビーズを輸送することができた。また、単体に比べて群れによる輸送では効率(輸送距離と輸送量)が約5倍に向上することも明らかとなった。さらに、紫外光の照射位置を指定することで、ビーズを任意の場所に集積することも可能とした。このように、群れの利用によってマイクロサイズの分子ロボットが単体ではなし得ない実効的なタスクを遂行できることが実証された。

 こうしたロボットは、薬剤の運搬や汚染物質の回収など、医療現場や環境保全といった様々な場面で活躍できるとみられ、今後の応用が期待される。

論文情報:【Science Robotics】Cooperative cargo transportation by a swarm of molecular machines

名古屋大学

真の勇気と知性をもち、未来を切り拓いていける人をめざす

名古屋大学は、9学部・13研究科、3附置研究所、全国共同利用・5共同研究拠点などを擁する総合大学です。創造的な研究活動によって真理を探究し、世界屈指の知的成果を産み出しています。自発性を重視する教育実践によって、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育成[…]

北海道大学

産業界や地域との連携を強固に「北海道大学ならではの実学」が世界をリード

北海道大学の起源は、1876年に設立された札幌農学校に遡る。長い歴史の中で、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」及び「実学の重視」という基本理念を掲げ、培ってきました。 この理念の下に国際的に通用する高度な学問的素養をもち、的確な判断力とリーダ[…]

関西大学

考動力と新たな価値を創造する力で、未来を切り拓く

137年の歴史をもつ関西大学は、大学昇格、また、学是「学の実化」の提唱100周年を2022年に迎えました。専門性を深く追求、好奇心のままに知を探究、自分の学びを広げる13学部を擁する総合大学です。不確実性の高まる社会の中で困難を克服し未来を切り拓こうとする強い[…]

九州大学

未来を切り拓く「総合知」を生み出し、社会変革を牽引する大学

九州大学は、12学部19学府を擁する基幹総合大学。世界最高水準の卓越した教育研究活動を展開し国際的な拠点となり得る「指定国立大学法人」として指定を受けました。これまで培い蓄積した人文社会学系から自然科学系、さらにはデザイン系の「知」を組み合わせた「総合知」によ[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。