自然エネルギー100%大学をめざすその先

 千葉商科大学は、2023年までに国内初の自然エネルギー100%(電気+ガス)の達成をめざしている。

 2021年6月、自然エネルギーの活用等を通じ大学活動に伴う環境負荷を減らすことを目的として、原科幸彦学長が代表世話人を務める千葉商科大学をはじめ、国際基督教大学、和洋女子大学、聖心女子大学など9大学が設立メンバーとなり「自然エネルギー大学リーグ」を発足。自然エネルギー100%をめざす大学を増やすため、知見を共有し、ネットワーク化、相互研鑽、人材育成、海外大学との交流など、持続可能な脱炭素社会やエネルギーの地産地消ともいえる地域分散型エネルギー社会づくりに向け、国内外とその活動を加速させている。

 

 

 2021年7月21日には、経済産業省が新しいエネルギー基本計画の素案を公表した。その計画は、2030年度の総発電量のうち再生可能エネルギーで36~38%を賄うというものだ。素案には「再生エネ最優先の原則で導入を促す」と明記され、30年度の発電量を3,300億~3,500億kwhに引き上げるとしている。つまり、再生エネをどう増やすかが今後の日本の重要な課題となっているのだ。

 千葉商科大学は、同大学の野球場の移転に伴い2013年9月末で閉鎖した野田グラウンド(千葉県野田市上三ヶ尾)の敷地約4万6781m2(約4.68ha)を有効活用して、同地に「千葉商科大学メガソーラー野田発電所」を総工費約7億円で建設、2014年4月より東京電力に対する売電事業を開始した。

 再生エネの代表格ともいえる太陽光発電。しかし、その拡大には、パネルの設置を巡るトラブルや、日本には設置スペースがないなど否定的な見方も多い。そのため、石炭火力での発電や原発の再稼働に依存、継続という議論がなされがちだが、果たして本当にそうなのかと原科幸彦学長は疑問を投げかける。

 「太陽光発電が、否定的な見方をされる要因としては、山林を切り拓き斜面に無理にパネル設置するものが多く、そのため近隣住民との合意形成がきちんとされていなかったり、豪雨などでパネルが崩落するなどのトラブルが相次いでいたりしているからだと考えられます。

 本学が設置したメガソーラーは、その解決策としての具体例で、野球グラウンド跡地で平坦な土地につくりました。日本にはまだまだ有効活用されていない平坦な土地がたくさんあります。採石場の跡地だった本学の敷地は、農地には向かないし、不便なところなので住宅開発にも向かない、私たちは、跡地利用に困っていた場所を有効利用したのです。

 この発想で視野を広げて考えれば、今、国内には耕作放棄地といわれる使われなくなった農地が、46万haほどもあります。本学のメガソーラーの敷地は4.65haですから、その10万倍です。つまり、メガソーラーが10万カ所も設置できる土地が使われていない。本学の発電実績は年間370万kwhほどなので、その10万倍なら3,700億kwh。政府の発電量目標値、30年度に3,300億~3,500億kwhを優に超える。つまり、土地利用計画次第で太陽光発電だけで目標達成が可能な計算になります。

 もちろん、このような土地利用を行うためには農業者など地権者と話し合い、合意形成が必要です。しかし、共に脱炭素化の問題に取り組むことで、共存共栄の新たな工夫が生まれるのではないでしょうか。これを実現していくのが、私たちが育てていきたいリーダーのあるべき姿、治道家なのです」

 

 

 千葉商科大学は、教育の理念として、「大局的見地に立ち、時代の変化を捉え、社会の諸課題を解決する、高い倫理観を備えた指導者」を示す「治道家」の育成を掲げており、これまでも多くの社長を輩出してきた※。他者を動かすためには、まず自らが行動せよという「隗より始めよ」を行動の指針としている。

 「私たちの取り組みをモデルとして、多くの大学や企業が事業所単位で目標を立てて取り組めば、地域分散型のエネルギー社会への転換も実現し、地域の雇用が生まれ、産業構造も変わると考えています」と原科幸彦学長は、その展望を語った。

 ※千葉商科大学は全国出身大学別社長数ランキング49位(帝国データバンク「全国社長出身大学分析(2020)」より)。現在、全国には780ほどの大学がある。

 

持続可能な社会実現の担い手たち

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