城西大学(埼玉県坂戸市)の姉妹校として、1992年に千葉県東金市に設立された城西国際大学。城西大学の創立者である水田三喜男氏が掲げた建学の精神「学問による人間形成」を受け継ぎ、現在もきめ細やかな教育を通して、多彩な人材を輩出している。2024年4月、任期満了による学長交代が行われ、前副学長の倉林眞砂斗氏が第6代学長に就任した。今後大学が目指す姿や、2025年度開設予定の健康科学部などについて話を聞いた。

 

文系理系にとらわれない複合的な学びを充実させたい

 第5代杉林堅次学長の任期満了に伴い、2024年4月、前副学長の倉林眞砂斗氏が学長に就任した。倉林氏は、考古学が専門で、東京大学大学院人文科学研究科考古学専攻博士課程(退学)後、東京大学文学部助手、金沢大学文学部(法文学部併任)助手を経て、1992年より城西国際大学に着任。環境社会学部長、観光学部長、副学長などを務め、今回の学長就任となった。

 「本学は1992年に経営情報学部経営情報学科、人文学部国際文化学科の2学部2学科でスタートしました。新しい時代を見据えた教育ということで、世界への玄関口である成田国際空港から車で30分ほどの場所で、国際教育を行ってきました」

 開学時は高校ほどの規模だったが、福祉総合、メディア、薬学、看護、観光などの学部学科が増設され、2024年4月現在の学部数は7、キャンパスは、東金と東京都千代田区紀尾井町との2キャンパスになっている(千葉県の鴨川市や美浜区幕張にキャンパスがあった時期もある)。学生数は大学院を含め、約6500名だ。

 今後も総合大学、国際大学の良さを活かしながら、今まで以上に多彩、複合的な学びを強化していきたいという。

 「これからは理系文系の垣根を越えた知識が求められる時代になっています。本学では全学共部通基盤科目として、約130科目を開講しており、一部を除き、オンデマンド形式で配信しています。教員は研究室などで講義を収録、配信し、学生は自分の好きな時間に受講し、質問などがある場合には、メールや対面でやりとりを行い、双方向性を担保しています」

 学生にとっては、自分の生活時間を有効に使えるほか、何度も繰り返し受講できたりとメリットは多い。講義では、他学部の学生からの質問などを紹介する場合もあり、教員、学生双方にとって、新たな視点に気付いたりするケースも珍しくないという。いわゆる一般教養科目にあたる科目群だが、教養や知識を修得するだけでなく、視野を広げたり、他学部学科の学生との交流にも繋げて欲しいというねらいもあるようだ。

2022年度から全学でクォーター制を導入。国際化も強化へ

 国際大学としての機能も強化する。

 「設立当初から海外に学生を送る、また、海外から学生を受け入れるということで、キャンパスのグローバル化を推進してきました。キャンパスをミニ国際社会みたいな環境にすることで、いろんな刺激をうけ、留学しなくても、異文化を感じることができる機会を作ってきました。現在、留学生、外国人教員の割合はともに13~14%。外国にルーツを持つ学生も多く、国数は11か国に及びます。キャンパスが多様な価値観で満ちあふれている状況は、今後も強めていきたい部分です」

 留学に関しては、近年特に力を入れている。開学後の海外派遣者数は、7千数百名を数え、2023年度は本学から548名の学生が海外に留学した(短期~長期)。学生全体の1割には満たないが、円安や海外情勢を考慮しても、極めて多いと言えそうだ。大学では、留学先の授業料は免除、現地での単位が最大30単位まで認められるJEAP(城西国際大学海外教育プログラム)を設けるなど、学生をサポートしている。

 2022年度から全学(観光学部は2020年度から実施)で始まったクォーター制も学生にとっては心強い。1年を前期と後期に分ける、日本の大学では一般的なセメスター制から、前期、後期をさらに半分ずつにし、7週間×4学期に分けるクォーター制に変更した(春や夏に集中授業を行うケースもある)。これにより、帰国のタイミングによって生じてしまいがちな空白時間を最少化できる。

 「1年留学の場合、6月上旬に帰国するケースが多いんですよ。現行のクォーター制の場合、そこから第2学期が始まるので、すぐに復帰してもらいやすい。2か国、あるいは3か国への留学にも活用してもらえるのではないでしょうか」

 もちろん、海外からの留学生にとっても訪日しやすくなり、彼らの増加も期待できる。クォーター制は、留学だけでなく、インターンや通常の授業でも運用しやすいという。インターンでは、異なる業界の会社に出向き、見聞を開く学生もいる。

既存の3学部を合体し、2025年4月から健康科学部を設置予定

 国際化と合わせて、先進国を中心に世界で大きなテーマとなっているのが高齢化社会や健康といった分野だ。城西国際大学ではこの分野にも力を入れていく。今までも医学部こそないが、看護学部看護学科、福祉総合学部福祉総合学科、理学療法学科、薬学部医療薬学科があり、看護師、保健師、助産師、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、理学療法士、薬剤師といった資格取得を目指すことができる。2025年4月からは、この3学部4学科を健康科学部の1学部に統合し、看護学科、理学療法学科、医療薬学科、福祉総合学科の4学科編成とする予定。ちなみに取得できる資格に変更はない。

 「近年の医療では、急性期をすぎると医者の出番は減り、看護師、薬剤師、理学療法士、社会福祉士、介護福祉士などが、連携し合いながらケアをして行く形が求められています。しかし、縦割り教育や行政システムの壁もあり、うまくいっていないケースが多く見られます。新設予定の健康科学部では、健康をテーマに、横串を通すようなイメージで、さまざまな職種の人が共に学び、連携をしていけるような環境作りを目指しています」

 それぞれ自分の専門分野を持ちながら、他の分野の知識も修得し、総合的な力やチーム医療に欠かせない尊重する力やコミュニケーション力を持った、これからの時代にふさわしいプロフェッショナルの輩出が期待される。

未来を意識し、新しいことに挑戦する気持ちを持ってほしい

 倉林学長は、最後に受験生にメッセージをくれた。

 「人生100年時代、みなさんの中には、22世紀を生きることができる人も少なくないかもしれません。通信技術の発達などにより、車は自動運転になり、医療では遠隔手術が普及するなど、大きく変わっていくでしょう。みなさんには、自分の生きていく未来を考えながら、大学で学んでほしいですね。時代の流れは早いので、大学で学んだら終わりではなく、修得した知識、感性、センスを、人生をかけて磨き続けていくことも大切です。今までの延長線として生きるのではなく、新しいことに挑戦したい、ギヤチェンジしたいという人には、ぜひ本学に来ていただきたいです。また、留学など、海外にも目を向けてください。日本人でパスポート持っている人は23%。うち出国率は11%。パソコンやスマホの普及で、自分の眼でみなくていい時代になっていますが、フェイク画像などもあります。海外に行き、自分の目でしっかり見て、いろんなことを経験してほしいと思います」

 時代に合わせて変化を続けていく城西国際大学。今後の動きに注目したい。

城西国際大学

倉林 眞砂斗学長

東京大学 文学部 史学科卒業、東京大学大学院 人文科学研究科 考古学専攻 修士課程修了。
城西国際大学開学の1992年より着任。
観光学部長、入試部長、教務部長、副学長などを経て2024年4月より第6代学長に就任。

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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