河合塾の進路・大学入試情報サイトKei-Netで「2026年度 国公立大 合格最高点・最低点・平均点一覧」が公開されています。一部、非公表の大学もありますが、合格最低点は受験生にとって有益な情報です。中には大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の合格最低点が得点率で50%を下回る大学も見られます。毎年、共通テストで失敗する受験生が見られますが、これらのデータからは挽回の可能性が十分あることが分かります。
2026年度入試結果の合格最高点・最低点・平均点
前年入試の合格最低点は、受験生が過去問対策を行う際にとても参考になります。各大学は自大学のサイトで情報を公開していますが、できれば全大学分をまとめて見られた方が便利です。現在、河合塾の進路・大学入試情報サイトKei-Netに「2026年度 国公立大 合格最高点・最低点・平均点一覧」が掲載されており、国公立大学のみですが大学別に合格最低点の確認などができます(一部の大学は非公表)。データは2024年度、2025年度と合わせて3年分が見られますが、ここでは2026年度入試結果のデータを見てみます。
まず、国内最難関の東京大学の入試結果をみると、第一段階選抜の最高点・最低点・平均点が掲載されています。これは共通テストの得点になります。そして、2次試験のみの結果は公開されていませんが、1次と2次の合計点(総合)の最高点、最低点、平均点が掲載されています<表1-1>。総合点のみの公開とは言え、総合550点のうち2次試験の配点が440点ですので、ほぼ2次試験の結果が反映されていると言えます。

1次の合格最低点は文類が点数の高い順に文Ⅲ→文Ⅱ→文Ⅰです。総合点は点数が高い順に文Ⅱ→文Ⅰ→文Ⅲです。感覚的には難易度順に文Ⅰ→文Ⅱ・文Ⅲなのですが実際の得点には多少の違いがあるようです。また、理類の1次の合格最低点は、高い順に理Ⅰ→理Ⅱ→理Ⅲの順ですが、総合点は理Ⅲ→理Ⅱ→理Ⅰの順です。理Ⅰは募集人員が1,000名を超えていますので点数で並べるとこうなるのでしょう。それにしても募集人員が約100名とは言え、同じ入試問題で理Ⅲの総合点の合格最低点が、理Ⅰ・理Ⅱよりも40点以上高いのはさすがです。
国公立大学の中には、同じ学部学科でも、1次と2次の配点を変えた複数の判定方法・方式で実施している大学がいくつかあります。その中の一つ、大阪大学経済学部の結果を見てみます<表1-2>。大阪大学経済学部はA配点、B配点、C配点の3つの判定方法がとられています。A配点は1次の配点が高く(2次の9倍)、B配点は2次の配点が高くなっています(1次の9倍)。C配点は1次と2次が均等配点です。合否判定は入学者選抜要項によると、A配点で上位65位以内にある者、同じくB配点で上位65位以内にある者を、まず合格者とします。同じ受験者がA、Bいずれの配点でも合格となることがあります。これらの合格者を除いた受験者の中から、C配点での高得点者順に合格者を決定します。各配点別の合格者数は公表されていないようですが、A配点65名とB配点65名の合計が130名です。2026年度入試の合格者数は204名ですので、A配点・B配点の重複合格者はいると思われますが、合格者の半分以上はA配点、B配点の合格者ではないかと考えられます。実際の共通テストの合格最低点は、「1次型のA配点>2次型のB配点」となり、2次試験の合格最低点の得点率は「2次型のB配点>A配点」です。当然ながら、配点通りの結果になっていますが、これが大学の意図なのでしょう。

河合塾の進路・大学入試情報サイトKei-Net「2026年度 国公立大 合格最高点・最低点・平均点一覧」
https://www.keinet.ne.jp/exam/past/score/2026/national/index.html
共通テストの合格最低点が得点率50%以下の大学も
合格最低点を大学間で比較する場合、2次試験は入試問題が異なるため、単純な比較はできませんが、共通テストであれば教科数や配点の違いはありますが、ある程度比較ができます。各大学の共通テストの合格最低点を得点率にしたところ、かなり低い得点率でも合格できている大学が散見されました<表2>。ただし、一言お断りしておくと、表中の大学は一部のみの抜粋で、しかも、入試情報の公開で共通テストと2次試験の結果を分けて丁寧に公表している大学のみに限られています。大学によっては平均点や総合点しか公表していない大学もありますので、情報公開の優良大学だからこの表に載っていると言えるでしょう。

このデータを見ると、共通テストの得点率30%前後で合格できているというのは、受験生にとって非常に希望が持てる結果です。2026年度入試では共通テストの平均点が大きく下がりました。また、数学や物理など理系生への影響が大きい科目で平均点が下がりましたので、その影響もあると思われますが、表中の学部系統を見るとほとんどが理系です。
なお、ハイライトしてある大学は、配点が2次型ですので、共通テストの合格最低点が低くなるのは、前述の大阪大学経済学部の例を見ても当然のことです。表中の大学で、理系が多いこと以外で共通しているのは、立地が地方であることです。大都市部とその周辺の国公立大学ではなかなかこの水準の合格最低点(得点率)は見られません。ただ、大都市部でも一部の教員養成系学部等では共通テストの合格最低点が得点率50%前後の学科も見られます。
都市部の受験生が地方の国公立大学を目指すケースは多くはありませんが、もともとその地域の受験生であれば地元大学になりますので、そのような受験生であれば、共通テストで多少の失敗をしても、簡単にはあきらめない方が良いことを示しています。これら表中の大学も共通テストの自己採点集計時の予想ボーダーラインは、当然ながらもっと高いラインが示されていましたが、当該地域の先生方などの指導者であれば、予想ボーダーラインよりも実際はもっと下がるのではないか、という予想も経験的にある程度可能なのではないでしょうか。
検討中の新たな情報公開サイトでは入試情報の統一が求められる
今回の資料をまとめて痛感したのは、各大学で入試情報の公開の仕方がバラバラだということです。共通テスト、2次試験、総合をきちんと分けて公開している大学もあれば、総合のみの公表や平均点のみの公表で、実際の合格最低点が分からない大学もあります。中には未だに非公表の大学もあり、大丈夫なのかと思ってしまいます。また、教員養成系や医療系で多く見られるのは、合格者数が少数のため公表しないとしているケースです。この少数という人数の基準も大学によって異なり、10名以下としている大学、5名以下としている大学のほかに「少数」としか示していない大学もあります。中には「合格者1名のため」としている大学もあり、これはさすがに納得しますが、教員養成系や医療系はそもそも募集人員が少ないため合格者数も少なくなることは分かっていることですので、奈良教育大学や京都教育大学などのように、せめて平均点は公表して欲しいものです。
大学の中には、公立はこだて未来大学や山梨大学(医-医)のように各教科別の合格最低点まで公表している大学もあります。受験生にとって具体的な目標が設定できますので、非常に素晴らしい対応です。また、2次試験に小論文、面接、実技が含まれる場合に点数を公表しないとしている大学も多く見られますが、それも工夫の余地があります。例えば、青森県立保健大学は小論文と面接の平均点を公表していますし、福岡県立大学は小論文や調査書の平均点を公表しています。また、名古屋市立大学に至っては小論文、実技、面接の最低点、新見公立大学も小論文、面接の最低点を公表しています。これらの大学は評価方法が確立されていて、学外に対しても説明可能な情報公開優良大学だと思います。
こうしてみると概して公立大学の方が積極的に情報を公開しているようですが、各大学は、合格最低点の公表を情報公開の文脈で捉えるのではなく、受験生に目標を示す教育的配慮の一環と捉える必要があるでしょう。入試情報の取り扱いについては、入試のルールブックである文部科学省の通知「大学入学者選抜実施要綱」では「入学志願者が学習上参考にできるようにする」と記されていますので、各大学は上記の情報公開優良大学を見習ってもらいたいところです。現在、文部科学省の部会(質向上・質保証システム部会)では、大学ポートレートに代わる新たなデータプラットフォームの検討が行われています。高校現場が本当に使える大学・入試情報の統一的な公開を目指していただけると皆がうれしいのですが・・・。
中央教育審議会 大学分科会 質向上・質保証システム部会
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/055/index.html#pageLink5