「個性の尊重」を大切にし、学生一人ひとりに寄り添ったオーダーメイドのキャリア支援を行ってきた成蹊大学。学生のニーズに応える取り組みとして2023年9月からビズリーチ・キャンパスを導入し、卒業生と学生がつながる機会を広げてきた。導入から約3年が経ち、年間100件以下だったOB/OGとのマッチング件数は700件超にまで増加。さらに、卒業生とのつながりを生かしたイベントの開催や、データを活用した支援など、取り組みの幅も広がりを見せている。導入後の変化と現在のキャリア支援について、キャリア支援センターの本郷有充事務長と落合伸之主査に話を聞いた。
成蹊大学キャリア支援センターの本郷有充事務長(写真左)と落合伸之主査(写真右)
ビズリーチ・キャンパス導入でOB/OGとの接点が広がり、有名企業400社実就職率がV字回復
成蹊大学は、「個性の尊重」「品性の陶冶」「勤労の実践」を建学の精神に掲げ、学生一人ひとりを大切にする少人数教育を実践している。キャリア支援センターでも、学生それぞれの希望や状況に合わせた「オーダーメイドの支援」を重視。1学年約2,000名の学生に対して、専任・非専任合わせて15名の職員が対応し、個別相談を軸に、自己PRの作成や進路選択、企業・業界研究、就職活動の振り返りまで、継続的に学生をサポートしている。
学生に寄り添う支援を続けるなかで、課題となっていたのがOB/OG訪問の機会を十分に提供できていないことだった。以前から卒業生に協力を呼びかけていたものの、連絡先の更新や個人情報の管理に課題があり、学生のニーズに十分に応えることができていなかった。特に、卒業から年数が経った社会人との接点を維持することが難しかったという。
この課題を解決するため、2023年秋に導入したのがビズリーチ・キャンパスだ。学生が卒業生に直接訪問を申し込めるようになり、キャリア支援センターによる個別の仲介が不要になった。導入前は年間100件未満にとどまっていたマッチング件数が、導入初年度に658件、翌年度には700件超に増加した。学生の登録件数は約900人に上っているという。
「ビズリーチ・キャンパスの導入により、在校生はさまざまな企業の卒業生と交流できるようになりました。大手企業を目指す学生にとっても、大きな足掛かりになっています」と本郷事務長。
キャリア支援センターでは、学内イベントや個別相談でOB/OG訪問の活用を促しているほか、OB/OG訪問に特化したイベントも開催。学生が最初の一歩を踏み出せるよう後押ししている。
OB/OG訪問の増加と並行して、成蹊大学の「有名企業400社実就職率」もV字回復を見せている。2023年卒に13.3%だった実就職率が、ビズリーチ・キャンパス導入の翌年には21.6%に増加。その後も伸び続け、2026年卒では26.5%という結果が出ている。全国のランキングを見ると、昨年の40位から31位に、東京都内の私立大学に絞ってみても昨年の15位から10位と大幅に上昇している。
成蹊大学【有名企業400社 実就職率】推移
母校愛の強い成蹊大学とビズリーチ・キャンパスの相乗効果で、新たなイベントが生まれる
成蹊大学とビズリーチ・キャンパスの相性の良さは、訪問件数の増加だけではない。
成蹊大学には、母校の学生を応援したいという思いをもつ卒業生が多い。以前から協力の意思を示す卒業生が数多くいたものの、学生との接点を継続的につくることは容易ではなかった。ビズリーチ・キャンパスは、卒業生の「協力したい」という気持ちを、学生のキャリア支援に生かす仕組みとしても機能している。
象徴的なのが、学生から人気の高い大手レジャー企業で働く卒業生との取り組みだ。この卒業生はビズリーチ・キャンパスに登録し、年間10件以上のOB/OG訪問を受け入れていた。学生との面談を重ねるなかで、就職活動が本格化する低学年のときから社会人と接する機会を設けたいと考え、キャリア支援センターに協力を申し出た。
これにより、キャリア支援センターは対面イベントを開催。卒業生が学生時代の過ごし方や現在の仕事内容を紹介したほか、学生からの質問にもその場で答えた。
「参加した学生から、『人気企業で活躍する先輩が成蹊大学の卒業生だと知り、自信につながった』といった声が寄せられています。仕事の魅力だけでなく、苦労や葛藤も聞けたことで、企業や仕事への理解を深める機会になったようです」と落合主査。

卒業生との交流は、別の形でも広がっている。キャリア支援センターでは、サービスに登録している卒業生の情報を確認し、学内イベントへの協力を依頼することもある。例えば、大手銀行を経て外資系コンサルティングファームに転職し、現在はディレクターを務める卒業生もサービスに登録している。キャリア支援センターでは、キャリアの歩みやコンサルティング業界の仕事について話してもらうイベントを企画しているという。
毎月の定例会で学生の動きを可視化。次の支援策を考える手掛かりに
ビズリーチ・キャンパスの導入によって、学生の動きをデータで把握できるようになったことも大きな変化だと、落合主査は話す。
サービスの導入以来、キャリア支援センターとビズリーチ・キャンパスの担当者は、毎月オンラインで定例会を実施している。登録学生数やOB/OG訪問の申し込み数、マッチング件数、OB/OG側の動きに加え、学生がどの企業のOB/OGに訪問を申し込んでいるのかといったデータも共有される。
これまでキャリア支援センターでは、主に個別相談などを通じて学生が志望する業界や企業を把握していた。導入後は、学生が実際に訪問を申し込んだ企業や利用状況を数字で確認できるようになり、相談窓口だけでは見えにくかった動きも捉えられるようになった。
例えば、OB/OG訪問の申し込み先を分析すると、上位には大手企業が並んでいる。キャリア支援センターでは大手企業への挑戦を後押ししてきたが、データからも学生の関心の高さを確認できた。学生のニーズと支援の方向性が合っていることを客観的な数字で確かめることができたことは、これまでの取り組みの「答え合わせ」になったという。
利用状況を継続的に確認することで、キャリア支援のスケジュールも改善できた。例えば、1~4月はOB/OG訪問の依頼が集中し、卒業生が多忙になりやすいことがわかる。そこで、より早い時期にOB/OG訪問を促すようになった。学生の利用が伸び悩んでいることがわかれば、LINEで案内し、必要に応じてイベントの開催を検討するようになった。このように、学生と卒業生の双方の動きを把握することで、必要な支援をより適切なタイミングで行えるようになった。
卒業生から直接得られる一次情報の重要性。卒業後のキャリア形成にも生きる
今の時代は、インターネットやSNSを通じて、企業の情報を手軽に集められる。一方、実際の仕事内容や職場の雰囲気、働く人の価値観まで理解するには、公開されている情報だけでは十分とはいえない。成蹊大学のキャリア支援センターがOB/OG訪問を重視する理由のひとつは、志望する企業で働く卒業生から直接話を聞けることにある。
「OB/OGから得られる一次情報は、とても貴重です。志望企業のOB/OGから話を聞けば、仕事の魅力だけでなく、仕事の難しさについても理解を深められます。複数の卒業生と会えば、一人の経験だけに偏らず、企業や仕事について多面的に捉えることもできるでしょう」と落合主査。
企業や仕事への理解を深めたうえで進路を選ぶことは、入社後に「思っていた仕事と違った」と感じるミスマッチを減らし、納得感のあるキャリア選択につながる。
また、OB/OG訪問には、社会人との対話を重ねることで学生自身が成長できるという側面もある。キャリア支援センターでは、訪問前に質問内容を一緒に考え、限られた時間で何を聞くべきかを助言している。訪問を重ねるうちに、学生は自分で質問を組み立て、相手の話を聞きながら会話を深められるようになるという。
「OB/OG訪問を重ねることで、学生たちは社会人との会話に慣れてきます。面接での受け答えにも変化が見られますし、志望動機にも説得力が増します。何よりも、相手の話を聞いて自分の考えを伝える力は、社会に出てからも役立つでしょう」と本郷事務長。

成蹊大学では、大手企業への就職実績を伸ばす取り組みを進める一方で、学生一人ひとりが希望する進路を見つけられるよう、支援の幅も広げている。2026年度には、さまざまな業界で活躍する卒業生の経験をオンデマンドで学べる「桃李キャリア入門」を開始した。また、自ら考え行動する力を育む「成蹊アントレプレナーシップ教育プログラム(SEP)」も実施している。
新しい施策を次々と生み出す背景には、「学生のためになることは即やる」というキャリア支援センターに根づいた姿勢がある。
「就職活動を取り巻く環境は変化が速く、前年と同じことを繰り返すだけでは学生のニーズに応えられません。企業や学生から新しい情報を集め、必要だと思ったことは積極的に挑戦していきたい。私たちは『シン大学職員』として、これからも学生のために動き続けたいと考えています」と落合主査。
成蹊大学キャリア支援センターは、学生一人ひとりに向き合う個別相談を土台に、ビズリーチ・キャンパスで卒業生とのつながりを広げ、データを活用することで、学生が自分らしい進路を見つけ、その先のキャリアを考えるための支援を磨き続けている。
