仕事をしながら、大学院で学ぶ。その先に、どんな未来があるのだろうか。多摩大学経営大学院では、2026年3月の修了生を対象とした調査で「総合満足度100%」という結果を得た。修了生や在校生からの紹介をきっかけに入学する人も多いという。なぜ、総合満足度100%という結果が出たのか。実務経験を持つ社会人が多く学ぶ同大学院で、何が得られるのか。品川駅から徒歩1分の多摩大学経営大学院を訪ね、研究科長・教授の河野龍太氏に話を聞いた。

 

第一線の実務家から、経営の実践知を学ぶ

 多摩大学経営大学院は、1993年の大学院修士課程開設以来、社会人を対象に実践的な経営教育を行ってきた。修了生は1,200名(2026年10月時点)を超える。現在も、幅広い業界で活躍する社会人が、仕事と学業を両立しながら学んでいる。

 「本学の説明会に来る方や実際に入学する方は、豊富なキャリアを持つ方が多いですね。ミドルマネージャーやシニアマネージャー、経営層の割合が高く、士業の方も学んでいます」と、研究科長・教授の河野氏は話す。

 2026年3月の修了生を対象とした調査では、総合満足度が100%に達した。ビジネススクールへの進学を検討して情報収集するなかで、多摩大学経営大学院を知る人が多い。一方で、修了生や在校生からの紹介をきっかけに入学する人も多い。

 多摩大学経営大学院を選ぶ理由として多く挙がるのが、第一線で活躍する実務家教員と少人数制の学びだ。

 「第一線で活躍する実務家教員から、経営の実践知を直接学べる。少人数クラスで深く学べる。この2つを理由に挙げる方が多いですね」と、河野研究科長。

 多摩大学経営大学院は、一般的なビジネススクールで学べるマネジメントの理論に加えて、「イノベーターシップ」という独自の概念をキーコンセプトに掲げている。「熱い思いと実践知をベースに『ありたい未来』経向けてイノベーションを起こそうと挑戦を続けるリーダーシップ」と定義づけており、14フィールドに分類したカリキュラムを用意している。

 14フィールドには、イノベーションを世に輩出するためのルールを形成する「ルール形成戦略」、医療介護の課題を学び解決策を考える「ヘルスケア経営」、起業や新規事業、企業内起業などをテーマとする「イノベーションフィールド」など、特色ある領域が含まれる。

 イノベーションフィールドでは、イノベーションの理論的な背景となる知識創造論を学びながら、起業や企業内での新たな事業創造について考える。スタートアップ支援や新規事業開発などの経験を持つ実務家教員から、理論だけでは捉えきれない事業創造のリアルを多角的に学べるのが特徴だ。

 また、教養を「ビジネス構想力の基盤」と位置づけ、歴史や哲学、芸術などの理解を深めるリベラルアーツ系の講座も豊富に用意している。

 経営学の理論を押さえながら、実務家の経験に根ざした知見を吸収し、自らの仕事に引き寄せて考える。少人数の濃密な学習環境のなかで、経営を多角的に捉え、実務に生かせる力を磨いていく。

学費は実質約134万円。修了後も学び続ける人が多い

 費用面もまた、多摩大学経営大学院を選ぶ理由の一つだ。2年間の学費は262万円(2027年4月入学の場合)。私立大学のビジネススクールのなかでは、比較的低い水準にある。

 さらに、同大学院の修士課程は厚生労働大臣認定の「専門実践教育訓練」の指定講座だ。そのため、一定の要件を満たせば最大128万円の給付を受けられ、自己負担は実質約134万円になる。

 学費を抑えられる理由について、河野研究科長は実務家教員による少人数運営と、施設を学習目的に絞ったコンパクトな設計を挙げる。

「サロンや大きな図書館、教員の研究室といった、学修に直接必要ではないスペースを省き、コンパクトな設計で運営しています」

 また、多摩大学経営大学院には、修了後も大学院で学べるポイント制度がある。大学院が主催するイベントへの参加など、さまざまな活動への協力に応じてポイントが付与され、修了生はポイントを使って科目を履修できる。
 
 在学中に学びきれなかった科目を改めて学ぶ人もいれば、修了後に新設された科目を履修する人もいるという。

「仕事を辞めずに学ぶ」を可能にする、品川駅徒歩1分の環境

 働きながら大学院で学ぶうえで、通いやすさも重要な条件になる。

多摩大学経営大学院のキャンパスは、品川インターシティフロントの5階。品川駅港南口から徒歩1分という、都心で働く社会人にとって利便性の高い立地にある。

「さまざまな路線が乗り入れる品川駅は非常に便利で、中には新幹線で通学している院生もいます」

 講義は平日の18時30分から21時40分まで、土日は9時から16時10分まで。仕事を終えてから平日の授業を受講したり、休日にまとまった時間を使って学んだりできるよう配慮されている。さらに、教室での対面授業とオンライン授業があり、仕事や生活の状況に合わせて受講方法を選択できる。

 働き方を変えずに、経営を学び直す――多摩大学経営大学院では、そんな選択肢を現実のものにしている。

仕事の課題を研究テーマに。「人生を変える行動計画書」をつくる

 実務家教員、成果に直結する経営の実践知、少人数クラス、学費、立地。ここまで挙げてきたのは、いずれも入学前に比較検討できる要素だ。しかし、多摩大学経営大学院で学ぶ魅力は、それだけではない。入学後に待っている学びも、その一つだ。なかでも大きいのが、学位論文である。

 多摩大学経営大学院では、修了要件として学位論文と最終試験を課している。学位論文には「実践知論文」と「修士論文」があり、約8割の院生が実践知論文を選ぶ。

「実践知論文は、院生自身が仕事の現場で向き合っている課題を研究対象にします。経営学の理論やリサーチを通じて課題を掘り下げ、解決策を考え、論文としてまとめます。一方、修士論文は経営学の理論を軸に研究を深めていきます。どちらを選んでも取得する学位は同じです」

 論文テーマを見ると、「中小零細企業の事業承継問題」「大手企業のR&D部門が継続的に成果を出し続ける組織へと変わるための提言」「ベテラン社員が『生涯現役』を貫くためのキャリア後半での準備に関する研究」など、院生が自身の仕事や組織で実際に向き合っている課題が出発点になっていることがわかる。研究の成果をその後の経営やキャリアにつなげている修了生も少なくないことから、多摩大学経営大学院では学位論文を「人生を変える行動計画書」と呼んでいる。

 大手教育系企業で新規事業を担当し、現在は子会社の役員を務める修了生は、知識創造理論を応用した課題解決型の論文を書いた。修了後、この研究成果をもとに新規事業を推進したところ、事業が軌道に乗ったという。

 PR会社で人事を担当していた30代前半の修了生は、子どもの体験格差をテーマに論文を書いた。家庭の経済事情によって、旅行やクラブ活動、塾といった体験機会に差が生まれる。その問題を研究するなかで「課題を解決したい」という思いが高まり、会社を退職。故郷に戻ってNPO法人を立ち上げた。

 立ち上げ当初は資金繰りに苦労したものの、活動が軌道に乗ると、地元企業から支援の申し出が寄せられるようになったという。

 なお、研究テーマを立てて、通常2万字前後に及ぶ論文に落とし込むのは決して簡単なことではない。そこで同大学院では、論文執筆を支える指導体制を整えている。院生は研究テーマに合う教員のゼミに所属し、主査や副査の指導を受け、対話を重ねながら1年かけて論文を仕上げていく。

「最初は論文執筆に臆する院生も少なからずいます。しかし、いざ研究を進めると、壁にぶつかって試行錯誤しながらも、研究の面白さを感じるようになる。気がつくと、『もう少し時間があれば』と夢中になっています」

職場では出会えない仲間と、2年間ともに学ぶ

 もう一つ、同大学院で学ぶ魅力として挙げたいのが、「仲間」である。

 少人数のクラスで、仕事を抱えながら2年間を過ごす。平日の夜や週末に同じ教室で学び、さまざまな講座で顔を合わせる。ともに課題に取り組み、議論を重ねるうちに、仕事だけでは知り合えなかった人とも互いを深く知るようになる。

 世代も幅広く、院生の約3割は留学生だ。異なる世代や業種の人と向き合うことで、これまでとは違った視点に触れられる。経験の浅い若手には、先入観にとらわれない問題意識がある。経験豊富な世代には、長年の仕事で培った知見がある。異なる背景を持つ仲間との議論そのものが、学びになる。

 明確な目的をもって入学する人もいれば、「このままでは成長できない」と今後のキャリアに不安を感じ、門を叩く人もいる。そして、どちらのタイプも、2年間の学びの途中で変化する院生が一定割合いる。入学時には考えてもいなかった領域に関心を持ち、やがてそのテーマで論文を書く。

 「教員とのディスカッションや、仲間同士の語り合いのなかから刺激を受けて、新たな気づきを得ているのでしょう」と河野研究科長は話す。

 多摩大学経営大学院が掲げるキーワードは「知の再武装」だ。

 第一線の実務家から実践知を学び、自社の経営課題を研究し、論文として形にする。世代も業種も異なる仲間と議論を重ね、そこで得た知見を修了後の仕事や新たな挑戦につなげていく。

 修了生の総合満足度100%という数字の背景には、こうした2年間の学びがある。院生一人ひとりが「自分なりの問い」と向き合ったその先に、未知のキャリアが拓かれている。

多摩大学経営大学院(多摩大学大学院 経営情報学研究科) 研究科長・教授

河野 龍太(こうの・りゅうた)

早稲田大学法学部卒業。英国ウォーリック大学経営大学院(Warwick Business School)にて経営学修士(MBA)を取得。博報堂、博報堂ブランドコンサルティングを経て、ITベンチャー数社で役員を歴任。その後、株式会社インサイトリンクを設立。多様な業界において戦略策定、新事業開発、新商品開発、人材育成研修等を支援。また、大手企業の経営者・経営幹部を中心としたエグゼクティブ・コーチングで豊富な実績をもつ。世界的な経営思想家で「ビジネスモデル・キャンバス」の開発者であるアレックス・オスターワルダー氏が創業したStrategyzerの公認トレーナー。

 

多摩大学

アクティブ・ラーニングを実践。新しい社会に生きる知の力を育てる

実学主義を掲げ、開学以来一貫して実学教育を展開している多摩大学。経営情報学部(事業構想学科/経営情報学科)とグローバルスタディーズ学部(グローバルスタディーズ学科)の2学部3学科を擁し、産業社会の問題解決の最前線に立つ人材を育成しています。学生の能動的な学修意[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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