北海道大学大学院理学院の自見直人氏、辻本惠氏、角井敬知氏、柁原宏氏および国立極地研究所の渡邉研太郎氏の研究グループは1月20日、南極の昭和基地沿岸の水深 9mから得たキブクレハボウキ属に含まれるゴカイ類の新種を発見したと発表した。

 南極では現在、生態系保全の観点から大陸全域における陸上・沿岸生物の長期モニタリングシステム構築に向けた取り組みが進められている。システム構築には大陸各地の生物相に関する情報の蓄積が必要だが、日本の観測基地である昭和基地周辺の生物相については特に沿岸海産動物に関して未だ理解が進んでいない状況にあった。そこで 2015 年より同研究チームは、昭和基地沿岸の海産動物相解明を目指し、国立極地研究所に収蔵されていた標本や新たに採集した標本をもとに研究を進めてきた。

 今回第22次南極地域観測期間中の1981年1月16日にスクーバ潜水により昭和基地西方「西の浦」の水深 8~9mから採集されたゴカイ類標本2個体について、実体顕微鏡と光学顕微鏡を用いた形態観察を行い種名を明らかにした。9mから採取された個体については、分厚い寒天質の被囊ひのうをまとった姿を南極という極寒の地で着膨れている様子に見立て、着膨れたハボウキゴカイ科の意の「キブクレハボウキ属」という和名を提唱した。水深 8mから採集された個体については既に名前がついている同属の Flabegraviera mundata であることが明らかとなったため、キブクレハボウキという和名を与え再記載を行った。なお、水深8mというのはこれまでのところ世界で一番浅い場所からのキブクレハボウキ属の採集記録になる。

 この研究により、10cm近くある比較的大きな動物にも未記載種が残されている現状が明らかとなった。そして、スクーバ潜水で採集可能な浅海にも同属のゴカイ類が生息することが明らかとなったことで、生きたキブクレハボウキ属の個体を用いた研究展開が期待される。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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