大阪大学産業科学研究所の真嶋哲朗教授らの研究グループは、黒リンを用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると可視光・近赤外光の照射でも、水から水素生成が効率よく起こることを世界で初めて見出した。

次ページへのタイトル[/link]水素を太陽光と水から効率的に製造できれば、水素をエネルギー源とする水素社会の可能性が開ける。しかし、現在の太陽光エネルギー(主に太陽光電池)は化石燃料より高価で普及が進まず、太陽光エネルギーから水素を高効率に製造できる光触媒の開発が望まれていた。従来の光触媒では、太陽光の3~4%にすぎない紫外光(可視光は44%、近赤外光は52%)を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率が低かった。

今回、研究グループは、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、層状のチタン酸ランタン(La2Ti2O7)を数層からなる超薄膜として利用。これらと数ナノメートルのサイズの可視光にも吸収をもつ金ナノ粒子との三成分からなる新しい複合体を開発した。

この複合体では、黒リンと金ナノ粒子が「光増感剤」として働く。すなわち、黒リンが可視光・近赤外光を吸収し、金ナノ粒子が可視光を吸収して、高エネルギー状態になった電子(励起電子)が、チタン酸ランタンに移動し、プロトン(水素原子核=陽子)を還元する。これにより、太陽光からの広帯域波長光を利用することが可能になり、水から高効率で水素を生成させることに成功。世界で初めての成果となった。

今回の研究成果は、水素を基本とするエネルギー社会(水素社会)の根幹となる、太陽光による水素製造の実現につながり、同時に環境問題の解決に大きく貢献することが期待される。

論文情報:【Angewandte Chemie International Edition】Au/La2Ti2O7 Nanostructures Sensitized with Black Phosphorus for Plasmon-Enhanced Photocatalytic Hydrogen Production in Visible and Near-Infrared Light

大阪大学

物事の本質を見極め、世界に羽ばたく。 「地域に生き世界に伸びる」ことをモットーに社会の課題に応える。

多様性を受け入れ、変化への柔軟性を発揮し、個性を貴ぶ気風。個々の優れた潜在力を活かし、「一人ひとりの真価」を「阪大の進化」に繋げていくことで大学の基盤を築いていきます。 「対話の促進」「自律性の堅持」の基本理念を特に重視し、キャンパス内で広く実行されていくこ[…]

この記事が気に入ったらおねがいします。

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。