東京工業大学の平井秀一郎教授の研究グループは、作動中の燃料電池内の反応生成液水の挙動をリアルタイム・高解像度で可視化できる技術の開発に世界で初めて成功した。これにより、燃料電池の設計に大きく貢献することが期待される。

 経済産業省は、水素社会の実現に向け、燃料電池自動車を「2030年までに80万台程度の普及を目指す」という目標を掲げている。これを受けて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業において、技術研究組合FC-Cubicと東京工業大学がX線による燃料電池の解析評価技術等の開発に取り組んできた。

 燃料電池は、水素と空気中の酸素(供給ガス)を触媒上で反応させて、水の生成時に発生するエネルギーを電力に変換するシステムだ。しかし、生成液体水が燃料電池内にたまると供給ガスの輸送を妨げる。そのため、燃料電池の性能向上には各界面層での生成液水の挙動を正確に把握する必要があるが、従来は発電性能から間接的に判断されてきた。

 今回、可視化装置の検討において、X線を平行に放出する「軟X線ビームの平行化技術」と光を電気信号にかえる素子の一種「CMOS検出器」を組み合わせ、また、観測用の燃料電池セルに工夫を加えてX線への影響を抑えた設計とした。これにより、実験室に設置可能な大きさの装置に仕上がり、高解像の可視化像をリアルタイムで得ることに成功。百万分の1メートル(µm)レベルの計測が可能になった。

 今回の成果により、高性能化・高耐久化を目指す自動車用燃料電池の特性改善や設計指針に資する技術開発の加速が期待される。今後、企業などとの共同研究により、自動車業界が求める燃料電池の高性能化、高耐久化、低コスト化が推進するとみられる。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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