千葉大学の橋本謙二教授らは双極性障害(躁うつ病)の原因にミトコンドリアの異常が関与していることを明らかにしました。双極性障害の原因としてこれまで提唱されていた仮説を支持する重要な成果です。

 双極性障害(躁うつ病)はうつ状態と躁状態を繰り返す慢性の病気です。日本では重い躁状態が現れるⅠ型と軽躁状態のⅡ型を合わせて0.7%程の人が発症するといわれています。躁状態は異常に「ハイ」な状態となり、常識では考えられない行動をとり社会的な損失や人間関係のトラブルを起こしたりします。さらにうつ状態に転じるときに激しく自分を責め、自己破壊的な行動を起こしてしまいがちです。そのためうつ病よりも自殺を図る割合が高く、再発率も高いことが分かっています。現状ではその原因は解明されておらず、治療も気分を安定させる薬などによる対症療法が中心となっています。

 今回の研究ではこの原因を調べるために同年齢の患者と健常者の脳脊髄液の代謝を解析しました。その結果、患者の脳脊髄液中のイソクエン酸という物質の濃度が有意に高いことを発見しました。さらに死亡した患者の脳を解析したところ、イソクエン酸を分解する酵素の遺伝子の働きが悪いことが明らかになりました。これは細胞内のミトコンドリアが持つクエン酸の代謝機能に異常が現れている可能性を示唆しています。双極性障害の原因としてこれまで提唱されていたミトコンドリア異常仮説をに合致する成果です。

 これによって双極性障害ではどこに異常が起こっているのかを大きく絞り込むことができました。しかしながら新しい治療法につなげるにはクエン酸の代謝に関わる遺伝子の異常箇所を突き止めるなど、発症メカニズムをさらに詳細に調べていく必要があります。今後の研究でさらに詳しく原因究明が進むことが期待されます。

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