京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、柏原英則元研究員(当時CiRA 上廣倫理研究部門、現・広島大学)、藤田みさお准教授(CiRA 上廣倫理研究部門)らのグループが、科学的根拠を十分に示さずに、自由診療で再生医療を行う民間クリニックのウェブサイトが多数存在することを調査、発表。2016年5月にカナダ医学雑誌「interactive Journal of Medical Research」にオンライン掲載された。

 現在、幹細胞治療などにおいて不適切なマーケティングが研究者の間で関心を集めている。中には効果や安全性がよく分かっていない治療もあり、過剰な期待が患者の中で形成されてしまうと、大きな失望や幹細胞研究・治療への不信感につながる恐れがあると懸念されている。

今回発表された論文は、「再生医療等安全性確保法※」が導入される前の2014年5月に、日本で自由診療の細胞治療を提供する24クリニックのウェブサイト情報を収集、分析したもの。 治療の多くは、がんを含む様々な疾患への治療や美容目的のアンチエイジングとして提供されていた。全体的に、治療のメリットやメディアで紹介された情報を過度に強調する一方で、リスクについて科学的に説明したものはほとんどなく、「eヘルス倫理コード2.0※」の最低限の基準をも満たしていなかった。

現在のところ、ウェブサイトの医療情報について国内では医療広告の規制対象とはならず、eヘルス国際倫理コード2.0もあくまで自主規制にとどまっている。海外でも同様の問題は指摘されており、今後、国内での規制が進み、国際的に統一された医療情報発信のガイドラインの策定が期待される。

※再生医療等安全性確保法
2014年11月に再生医療等技術の安全性確保と生命倫理への配慮等について施行された法律。

※eヘルス倫理コード2.0
医療・健康情報やサービスについて、サイトの運営者が利用者の立場に立って、質と信頼性の確保に努めていくための自主的基準。サイトの運営者が利用者の立場に立って、質と信頼性の確保に努めていくための自主的基準。

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