香川大学の太田健一助教、鈴木辰吾准教授らの研究グループは、株式会社カネカとの共同研究により、幼少期に母子分離ストレスを受けたラットモデルに認められる社会的認知能力の低下が、乳酸菌またはビフィズス菌の加熱殺菌体摂取により改善することを明らかにした。
近年、腸内細菌やその代謝産物が脳機能に影響する「腸脳連関」が注目される中、生菌を用いず加熱処理などで不活化した菌体やその成分を利用する「ポストバイオティクス」が、安全性や保存性の面で利点が期待されている。
研究グループは今回、母子分離によって幼少期ストレスに曝露したラットモデルを用い、離乳後に加熱処理した乳酸菌(Lactiplantibacillus plantarum KABP-051株)またはビフィズス菌(Bifidobacterium longum KABP-042株)を摂取させ、その後の行動、脳機能、腸内環境の変化を解析した。
その結果、幼少期ストレス群では社会的認知能力の低下を示す行動変化を認めたが、両菌株の摂取で改善した。また、作業記憶を評価するY字迷路試験では、乳酸菌の摂取によって幼少期ストレス群で認められた成績低下が改善した。
一方、社会性に関わる内側前頭前皮質の組織学的解析では、幼少期ストレス群において神経活動の低下などの変化を認めたが、ビフィズス菌の摂取でその一部が改善した。さらに、幼少期ストレスによって変化した腸内細菌叢や酪酸産生関連指標などを含む腸内環境についても、各菌株の摂取による改善が認められ、特に乳酸菌ではより広範な効果がみられた。
ヒトへの応用にはさらに検証が必要だが、乳酸菌・ビフィズス菌の加熱殺菌体は、生菌を用いないため食品素材として扱いやすく、将来的には腸脳連関に着目した新たな介入法の開発が期待されるとしている。
