京都大学の河本宏教授、前田卓也特定研究員らは、ヒトiPS細胞からがん細胞を殺傷する能力を持つキラーT細胞(ウイルスに感染した細胞やがん細胞を殺傷できるT細胞)を作製することに成功した。

 これまで、がん細胞に反応するキラーT細胞を体外で増やして患者に投与すると、がんの治療に有効であることが示されてきた。しかしキラーT細胞を培養すると、ある程度増えた時点で疲弊してしまい、高品質な細胞を効率よく増やすことは極めて困難だった。

 そこで、研究グループは、がん抗原を認識できるT細胞からiPS細胞を作製し、その iPS 細胞からT細胞を再生すればT細胞だけを量産できると考えた。このアイデアに基づき、同グループは2013年に世界で初めて、がん抗原に反応するヒトのキラーT細胞の再生に成功した。

 しかし、これまでの培養法では、生体中のキラーT細胞に比べると、がん抗原を標的にして殺傷する能力の弱い細胞しかできないため、今回、培養法の改良を行った。その結果、iPS細胞からT細胞を再生させる過程で生成されるCD4とCD8という分子をともに出す若い細胞を、他の細胞から分離して刺激を加えると、殺傷能力の強いキラーT細胞の作製に成功した。この手法により、白血病や各種の固形がんが多く持っているWT1抗原を標的とする再生キラーT細胞を作製すると、この細胞は白血病細胞を試験管内で効率よく殺傷した。また、免疫不全マウスに白血病細胞を注入して作製した白血病モデルで治療効果が得られた。

 今回の成果は、再生キラーT細胞を用いたがん治療の戦略を、臨床応用に向けて前進させたとされる。現在は急性骨髄性白血病の治療戦略としているが、将来的に各種悪性腫瘍への応用が期待される。

京都大学
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大学ジャーナルオンライン編集部

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