京都大学の山下淳教授、坂田隆造元教授、田端泰彦教授らの研究グループはマウスES細胞から作製した心臓組織シート15枚を積層化し、厚さ1mmにすることに成功しました。さらに心筋梗塞のラットに移植したところ、3カ月で血管の通った厚い心臓組織として生着したことを確認しました。

 重い心不全では心筋細胞が失われるだけでなく、血管など様々な細胞が失われることで周辺組織の構造自体が壊れていきます。そのため心筋細胞を移植するだけでは治療には不十分で、その他の細胞も十分に補うことで組織を再構築することが望ましいとされています。iPS細胞やES細胞といった万能細胞を増殖させて移植し、多様な細胞に分化誘導することでこうした治療を行える可能性があります。

 万能細胞を移植する方法として現在有力なのは、細胞から作ったシートを積層することです。しかしながら3枚以上重ねると栄養がいきわたらなくなり細胞が死んでしまうといった問題がありました。今回、グループはマウスのES細胞から作ったシートの間にゼラチンから作ったゲルの層をはさみ込むことで細胞が生きたまま15枚のシートを積層することに成功しました。さらにこれを心筋梗塞のラットに移植したところ、3カ月にわたって生着し、欠陥を補うぶ厚い心臓の組織にまで成長することを確認しました。ヒトのiPS細胞でも同様の方法が有効であると考えられ、重い心不全の治療に大きく近づいたことになります。

 今回開発した細胞のシートの技術は欠損した組織の機能回復という点で他の臓器への転用も可能であると見込まれます。組織の一部を失うことで後遺症を伴う病気も、再生医療で治療をできる日は着実に近づいてきているようです。

 

京都大学
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大学ジャーナルオンライン編集部

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