理化学研究所 倉谷形態進化研究室の倉谷滋主任研究員、兵庫医科大学教養部門生物学の菅原文昭講師(理研倉谷形態進化研究室客員研究員)らの共同研究グループは、ヌタウナギとヤツメウナギの脳の発生過程を観察し、段階的に進化してきたとされる脳の各領域のほとんどが、5億年以上前にすでに成立していたことを明らかにしました。

 現在地球上に生息する脊椎動物は、ヒトを含めた顎を持つ「顎口(がっこう)類」と顎を持たない「円口類」に大別され、5億年以上前に進化的に分岐したとされます。これまで、円口類の一種であるヤツメウナギには、大脳基底核の一部である内側基底核隆起と小脳の発生の場となる菱脳唇という部位が確認できませんでした。そのため、この2領域は顎口類で新たに発達したとされました。しかし、ヤツメウナギで退化した可能性もあるため、研究グループは円口類のもう1つの系統であるヌタウナギの脳との比較が重要としていました。ヌタウナギは深海に生息し発生過程も謎に包まれていましたが、研究グループはヌタウナギの人口養殖(2007年)と受精卵の採取(2011年)に成功。そこから得られた胚の遺伝子を解析すると、2領域に相当する遺伝子の発現が観察され、内側基底核隆起や菱脳唇などの存在が明らかになりました。さらにヤツメウナギでも胚の再解析により2領域の存在を突き止め、先行研究の内容を覆すこととなりました。

 これにより、脊椎動物の脳が段階的に複雑化したとの従来の理解とは異なり、脳の基本パターンの大部分は顎口類と円口類の共通祖先が生息していた5億年以上も前に成立していたことが判明しました。今後の課題として大脳新皮質の進化的変遷の解明からヒトの「知性」の発生に迫るなどの興味深いテーマが挙げられるとしています。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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