厚さ80nm(1nm は1mmの百万分の1)の薄膜でできた「ナノ絆創膏」をマウスの傷付いた腸に貼ることで腸の癒着が防げることを、防衛医科大学校などの共同研究グループが世界で初めて報告しました。本研究は、防衛医科大学校病院外科/名古屋大学大学院小児外科学の檜顕成助教、早稲田大学理工学術院の武岡真司教授、防衛医科大学校免疫微生物学講座の木下学准教授らによるもので、3月3日、英国外科学会誌「British Journal of Surgery」オンライン版に掲載されました。

 腹部の手術後、腸が癒着して食事が通りにくくなる例が時々あります。とくに腸に穴が開いて起こる穿孔性腹膜炎ではこの癒着が起こりやすく、とくに患者が成長期にある小児の場合、この腸癒着で成長に必要な栄養を十分に取りにくくなり、患者やその家族、医療従事者にとっても大きな問題となることが珍しくありません。現在、癒着防止材として使われているものは、穿孔性腹膜炎のような腹部に感染がある患者には使うことができず、感染があっても使える新しい癒着防止材の開発が望まれていました。

 同研究グループは、これまでに細胞膜と同程度の薄さをもつ「ナノ絆創膏」を開発。この薄膜シートは接着剤を使わずにあらゆる臓器や組織の表面に間隙なく貼付できるもので、肺気胸のように肺に穴が開いた場合や大静脈が裂けて大出血した場合、その部分に貼ることで創部を閉鎖できることを報告してきました。今回の研究では、マウスの腸に傷を付け、その上からポリ乳酸でできたナノ絆創膏を貼付。一週間経過を見たところ、ナノ絆創膏を貼った腸に癒着防止効果が認められました。また、ナノ絆創膏には傷の治りを促進させる効果があることも示唆されました。
 ナノ絆創膏の材料であるポリ乳酸は体に吸収され、また感染を増悪させる作用もないため、感染があっても使える可能性が見出せます。そのため、これまで有効な対策がなかった穿孔性腹膜炎時における腸癒着の予防、とくに未来ある小児患者における腸癒着の予防に役立つことも考えられることから、今後、臨床現場での高い有用性が期待されています。

名古屋大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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